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島耕二「渇き」山本富士子サブリン佐分利信川崎敬三田宮二郎大山健二

 神保町にて。「監督と女優とエロスの風景」特集。58年、大映東京。
 このところ、すっかりご無沙汰、久しぶりの神保町シアター。だって、このところ、ぼくにとっては既見作ばかりだったもので。
 結婚6年目、倦怠期の夫婦、佐分利信と山本富士子、って・・・・、おい!
 本作は58年、6月公開とのこと。ところが、なんと小津安二郎「彼岸花」では、友人・有馬稲子の父・佐分利信を、だます娘世代の山本富士子。「彼岸花」は、「渇き」三ヵ月後、同年9月公開とのことだ。
 まあ、いろいろな役を演じる、それが役者といってしまえばそれまでだが、ちょいと極端だあね。
 「彼岸花」では、父親世代として余裕の眼を、娘世代の山本に向けていた佐分利も、本作では、酔っ払って、妻・山本富士子に、ねっとりと欲望の目を向ける。でも、「あなた、およしになって。女には、準備というものがありますもの」と、これも久しぶりでまんざらでもない山本富士子、別室でその準備を、うきうき整えて戻ると、当のサブリンは、待ちくたびれて高いびき。

 あるいは、他社では、とっくに人妻女優の山本富士子を、行き遅れではあるが、いまだきゃぴきゃぴの娘として扱う、小津の、女優感覚といいますか。これは小津の後輩、しかも小津「東京物語」リメイクを画策している山田洋次「男はつらいよ」シリーズが、言っちゃ悪いが、常に、他社のお古女優(失礼)を、ようやくマドンナに迎えるという、時代感覚に引き継がれている、松竹の伝統芸なのかしらん。妄言多謝。

 「彼岸花」では、ちょいと嫁に行き遅れの、しかし娘。本作では、倦怠期の、佐分利信の妻。若い大学生・川崎敬三にメロメロとなり、ついには婚外妊娠。
 こういう、佐分利・山本・川崎の三角関係メロドラマには、まったくどうでもいいのだが、まあ、水準的なメロドロマ(ドロドロな関係のメロドラマは、当ブログでは、メロドロマと呼んでいる、って、本当かい)というしかないが、なんと、本作は「彼岸花」どうよう、とても美しいアグファ・カラー! しかも「彼岸花」のスタンダードに対し、本作はシネスコ・サイズ。
 ああ、やっぱりカラーはアグファに限るなあ、とため息。撮影・小原譲治の美しい映像。
 そして、島耕二は、ほの暗い照明を多用して、人物を真っ暗に映すのが、やはりスキなんだねえ。ほとんど真っ黒なシルエットに、一部顔が、光を浴びて、輝く。山本富士子の美貌と、黒は黒ではっきり写るアグファ・カラーの素晴らしきコラボ。そして、そのアグファで最高に映える、大映美術も、グッド。
 男女が密会する、ほの暗い喫茶店が多用されるのも、色事の雰囲気作りもあるだろうが、アグファカラーの、くっきりとした黒を出すためではないか。
 川崎敬三の友人大学生に、まだ柴田吾郎時代の田宮二郎。さわやかな川崎もいいが、どうせメロドロマなら、ねっとり田宮で、見たかった。
◎追記◎小津は、確か、大映から山本富士子を借りるに当たって、やはり山本の華やかさはカラーでこそ、と自身初のカラー映画「彼岸花」を撮った、ということのようだ。ということは、山本富士子こそ、ザ・アグファカラー女優というべきか。冨士フィルムは、お呼びでなかったのね(笑)。「あたしにも、写せます」でも、「あたしを撮るのは、十年早いわよ」というところか。
◎追記◎サブリンが宴席に行くと、上座に座るは、大山健二。もちろん戦前松竹で、何十回も共演したふたり。大山健二は、この頃、大映専属の脇役、いい年のオヤジふたりのツーショットに、こっそりうれしがるのは、戦前松竹ファンのみの特権?(笑)か。

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by mukashinoeiga | 2012-03-05 00:09 | 島耕二と行くメロドラ航路 | Comments(0)

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