吉村・今井・山本「愛すればこそ」

 京橋にて。「映画女優 香川京子」特集。55年、独立映画。
 近代映画協会などの、当時の独立プロダクションが結集しての、三部作オムニバス。
 で、当時の独立プロは、左翼のソウクツ。左翼は、理想を語る。というのは、タテマエというか、文字通り、理想であって、82分で三話のエピソードというと、とうぜん、うわすべりした、紋切り型のタテマエしか、語られることはない。まるきり、面白くない。典型的<主人持ちの映画>。コクもなく、キレもない。
 第1話・吉村公三郎「花賣り娘」
 首になった、銀座のバーの雇われマダム・乙羽信子と、幼い花売り娘・町田よし子の、貧しい者どうしの交流。特にどうということのない掌編。銀座のバーの雇われマダムが、佃の渡しの先の、しもた屋の二階に仮住まい、という成瀬巳喜男「女が階段を上る時」の設定と同じ、まあ、そこだけは、いいんだけどね。
 なお、このエピでも、勝鬨橋が開くところがチラッと映る。勝鬨橋の開閉は、あまり意味がなくなったが、意味がなくなったからといって、開閉をやめたとたん、この地域は、ランドマークを失い、没落した。再び、この地域は新ランドマーク、東京スカイツリーを得たが、それは、勝鬨橋に変わりえるだろうか。
 役に立たない、邪魔だから、という理由でランドマークを消滅させることの不幸を、勝鬨橋は示している。
 第2話・今井正「とびこんだ花嫁」
 川崎の貧しいアパートに住む工員・内藤武敏のところに、田舎から、いきなり、花嫁・香川京子が、送り込まれる。困惑する内藤青年は、同宿の同僚、高原駿雄や井出忠彦らに相談、何とか、追い返そうとする。
 いくら、いきなり送り込まれたとはいえ、超可愛い、しかも性格の良さそうな香川京子を、追い出すことしか考えないという<左翼原理主義>に、失笑。
 第3話・山本薩夫「愛すればこそ」
 母・山田五十鈴、長男の東大生・田口計、長女・誰かしら、次女・中原早苗。長男が左翼運動で逮捕される。残された家族は、偏見のなか、生活が困窮する。長女は結婚できず、次女は、進学をあきらめる。
 家族のことも考えず、理想主義に走る左翼青年。
 いやあ、ここで、笑っちゃうのは、<語るに落ちる>とはこのことか。ちがうか。
 理想に燃える、さわやか左翼青年役の田口計。中年以降は、胸に一物、腹黒い悪徳官僚・悪徳弁護士、時代劇では悪代官などを、得意とする。理想に燃えた左翼青年も、年をへると、より、いっそう悪い体制側に組み込まれるという、ルーピー、菅、野ダメら現在の民主党政権の現実を見るような(笑)。
 田口計の思想的ガールフレンドに、久我美子。いいとこのお嬢さんで、左翼思想に、お遊びで染まるという、木下恵介「女の園」と同様の役回り。こういうのが、いちばん、始末に悪いんだよなあ。いや、現代の民主党、社民党の女性政治家で、いっぱいいるタイプ。

 吉村公三郎、今井正、山本薩夫という、面白い映画を作る映画作家たちが、短い短編だと、語るに落ちる、タテマエしか、表現し得ないという、左翼の病。
 ああ、つまらない。凡作。
 しかし、香川京子ら、出演者全員は、素晴らしい。楽しめる。 監督たちだけが、ダメなのだ。


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by mukashinoeiga | 2011-11-14 23:59 | 山本薩夫傷だらけの左傾山河 | Trackback | Comments(2)

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Commented by お邪魔ビンラディン at 2015-06-06 01:27 x
第1話は町田よし子の可愛らしさと殿山泰司の存在で、吉村公三郎のたしかな演出力を印象づけるものの「えっ、もうおしまいなの? 入口だけじゃないの!」と文句を言いたくなったのを覚えています。
第2話のラストは、結局、香川京子との結婚に向けて踏み出すことになったのではないかしらん? これは、当時の香川京子が、今でいえばさしずめ綾瀬はるかか堀北真希といったあたりに相当するアイドル性をもっていたからかろうじて成り立つエピソードなので、数年後の北沢典子なら代わりを演じられたかもしれないけれども、三原葉子や団令子ならどう見たって追い出さざるを得ないだろうし、若水ヤエ子だと話が絶対に成り立たないですね。
第3話「愛すればこそ」の長女は岸旗江です。山本薩夫の助監督から「ドレイ工場」で監督となって、組合に押されて再建中の大映の重役になった武田敦さんの奥さんで、娘さんが武田美穂という絵本作家ですが、娘さんの方が美人じゃないのかな。
この映画の公開当時、「左翼運動で逮捕され」て、かなり長い間ブタ箱から出られないというのは、「仲間を売らないことを理由とするイヤガラセのためのみせしめ」でなければ、刑事事件の武装闘争容疑以外には考えられません。あの演出からは後者であるようにも思えないので、そうすると、かなり時代錯誤的な設定ではないかと思わざるを得ません。
この映画、独立映画の自転車操業的な資金繰りのために作られたと聞き及びますが、客の立場から言うと、第2話の香川京子の可愛らしさ以外には、とくにお金を出して見に行きたいという要素は認められず、かえって資金繰りを悪化させたのじゃないかと、60年も前の人ごとながら、心配になって来ます。
Commented by mukashinoeiga at 2015-06-07 07:55
吉村・今井・山本「愛すればこそ」へのコメント、お邪魔ビンラディンさん、ども。
>第1話は~「えっ、もうおしまいなの? 入口だけじゃないの!」と文句を言いたくなった

 あれは、ぼくも、ホントにあっけなく感じて、もっと見ていたかったのに、でした。おそらく、オムニバスにするには、2話のみでは締まらない、とお付き合いで無理矢理(笑)参加させられて、全員ノーギャラ映画らしいので、吉村、早々に切り上げた、といったところではないでしょうか(笑)。

>第2話のラストは、結局、香川京子との結婚に向けて踏み出すことになったのではないかしらん?

 そこらへんはすでに記憶のかなたですが、返したような、ちょっと微妙なままのような? まあ、あんなに可愛い香川を追い返す算段の仲間たち、一人ぐらいは、帰すなら俺にくれよぉ、というような、冗談すらないのは、さすが左翼原理主義者たちだけのことはある(笑)。 

>三原葉子や団令子ならどう見たって追い出さざるを

 そもそも彼女たちなら、本作の香川みたいな、主体性のなさは、考えられない(笑)。

>とくにお金を出して見に行きたいという要素は認められず、かえって資金繰りを悪化させたのじゃないかと

 やはり左翼運動に身を投ずれば、香川京子みたいな可愛い彼女をゲットできるぜー的な(笑)方向で、まだ左翼色に染まっていないノンポリ青年をひきこまないと。
 じゃないと「愛すればこそ」というタイトルが生きないのでは。ああ、タイトルの愛は左翼愛、ソ連愛でしたか(笑)。   昔の映画
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