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森一生「旅籠屋騒動[『お伊勢詣り』改題]」

 京橋にて。「生誕百年 映画監督・森一生」特集。39年、新興キネマ京都。
 お伊勢参りの旅人たちを止める旅籠屋での一夜を描くヴァラエティー時代劇。 
 旅籠の主は、老け作りヨイヨイの伴淳。死にかかっているのにやたら元気な老人を珍演する。
 その愛娘に、若き日の森光子。当然美人でもないが、番茶も出花の愛らしさ。
 その兄に、小太りのボンクラ息子・玉松一郎。この旅籠の女中を怪演するのは、ミス・ワカナ。このふたりは、当時吉本の人気漫才コンビ<ワカナ・一郎>。ほかに<ラッキー・セブン>など、当時の人気漫才師たちが大挙出演する。現在も、70年前も、関西のお笑いといえば、吉本やったんやなあ。
 吉本興業創業者・吉本せいが、当時人気のメディアである映画に目をつけていたせいか。その吉本せいのDNAが、現代にもつながっていて、たまに吉本の芸人さんが映画を監督したりする。なお、その吉本せいをモデルにした映画が、もちろんアラタマ主演「花のれん」。監督はトヨシロだったか。
 で、大挙出演している、当時の人気芸人たちが、まったく面白くない。
もちろん、客の反応を見ながら、ライヴで芸を練り上げていく芸人たちが、当時新興のメディアであるトーキーに、戸惑っているというのも、あるだろう。キャクなし、の代わりに冷徹な?キャメラを目の前に芸を演じるというのも、当時としては、慣れない事だろうし、検閲も受けなけりゃいけない映画は、ライヴ演芸ではストレートに出来ることも、ためらわざるを得ないギャグもあったろう。
 彼らの漫才が面白くないのは、当時の世相・流行をテーマにした、退屈な話芸だから。
 ただひとりだけ、異彩を放っているのが、ミス・ワカナ。
 目をむき出したり、へんてこな目線をつけたり、異形の珍演。ドツキ漫才の<ドツカれる女のほう>タイプ。ただし、戦前のこととて、実際にドツカれるようなことはなく、自由に顔をくねらせ、体をくねらせ、酔いどれて、悪態をつく、珍芸を見せる。その異形の姿態が、楽しい。
 日本語・中国語ちゃんぽんの歌とか、タモリの先駆としても素晴らしい。そのドクサレ芸?は、妙に現代的だ。時に、その、よじれた顔は、愛らしくすらあるのが、凄い(笑)。
 森一生の演出は、旅籠内の集団歌謡シーンにマキノ「鴛鴦歌合戦」を思わせるものがあり、マキノよりちと上品な描写が微笑ましい。

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by mukashinoeiga | 2011-06-26 23:10 | 大映京都学校 森一生佐 | Comments(0)

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