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大庭秀雄「女舞」岡田茉莉子佐田啓二岩下志麻千乃赫子杉田弘子二木てるみ

 阿佐ヶ谷にて。「松竹大船 メロドラマの薫り」特集。61年、松竹大船。 
 日本舞踊のお師匠さんとしてすでに一派をなす、岡田茉莉子、能の若きスタア家元・佐田啓二に、教えを乞う。この佐田、近寄る女はみなモノにして、捨ててしまう色魔として、舞踏業界では悪名がある。
大庭秀雄「女舞」岡田茉莉子佐田啓二岩下志麻千乃赫子杉田弘子二木てるみ_e0178641_11495249.png みなは忠告するが、あたしは大丈夫よ、と岡田。だいいち、あの人、うわさと違って、あたしになんか、色目ひとつ使わないのよ。
 ところがどっこい。直前まで下心を見せずに、突如として渋谷の待合に連れ込み、いや連れ込んでも、いつもながらのクールなそぶり。全然そんな気配も見せないのに、これまた突如豹変、次の瞬間には、もう布団の敷いた部屋に連れ込み、岡田の帯をするするする。
 この、超クールな二枚目、女なんか関心がございません、の古典的二枚目の佐田が素晴らしい。
 いまどき、こんな古典的二枚目の演技やったら、コントだろ、にしかみえまい。たちまちの失笑。
 しかも、豹変したとたん、やっぱりと、どっと笑いが来るに違いない。
 それを、観客に笑いのわの字も、感じさせない。神がかった二枚目ぶり。
 日活アクションの小林旭を、小林信彦は、無意識過剰と評したが、そう、真のスタアのみが達しえる無意識過剰あってこその二枚目魂。すばらしい。おそらく同時代の二枚目スタアたちも、この境地には、なかなか至らなかったのではないか。
 ただし、家元の座を追われ、都落ちし、死の病に伏す佐田はいただけない。<落ちぶれた二枚目の落剥>は、まだまだ。森雅之に、及ばず。
 相手役・岡田茉莉子は。うまい、セクシー、華がある。でも、なんか、いつも、おんなじなんだよね。水準以上の質は常にキープするが、まあ、これはスタア女優さん全般に言えることかもしれないが、何か突出した瞬間というのが感じられない。ただし、彼女の華やかさは、すばらしいもので、後輩の岩下志麻や、小山明子は、とうとう、華がない。その岩下が、岡田の内弟子役。清楚で愛らしいが、姉弟子(というのか)千乃赫子の、いけずやさしい?キャラには、負ける。
 佐田に捨てられた女に杉田弘子。いや、やっぱり似てるよね、杉田かおるに。岡田や(杉田が)連れ込まれる渋谷の待合、浦辺粂子の孫娘、宿題をしつつ、「今度の女の人は、前連れてきた人と、違うね」と、杉田かおるライクな、こまっしゃくれた小学生に二木てるみ。
 ニュープリントのカラー・シネスコ映像が素晴らしい。特に隅田川界隈の橋やら、路地やら、川やらの、ロケ撮影もグッド。オープン・セットの素晴らしさは、松竹なのに、大映美術並み!!と、感動しましたが、リアル・ロケでしたね(笑)。カラー・ニュープリントで見るリアル昭和三十年代の、なんてことないロケの美しさ。

by mukashinoeiga | 2011-01-04 23:31 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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