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マキノ雅弘「おしどり駕篭」

 池袋にて。「錦之助映画祭り2010」特集。58年、東映。
 監督がマキノで、主演が錦之助・ひばり、絶対の安定株だ。外れはないはずと、見たら、その通りで、うれしくなる。ただし、パーフェクトではない。マキノも、お気楽に作った水準作。
 錦之助とひばりなんだから、多少手を抜いても、よいものが出来よう、と肩の力、抜きすぎ。でも、面白いんだから、しょうがない。
 互いに憎からず思っているのに、会えば、喧嘩ばかり。黄金のパターンですな。
 錦之助は、いなせな左官職人、ひばりは、「あたりぃ~~」で、おなじみの、矢場の看板娘兼店長。
 そして、錦之助は、実は、さる藩の若君。堅苦しい侍稼業・大名稼業を嫌って、江戸の市井に、いなせな職人として、日々を送る。あまりにわかり易すぎる、貴種流離譚。いや、俺だって、実は、という、庶民の妄想願望の、わかり易すぎる黄金パターンで。
 出自たる藩のお家騒動解決のため、一時的に、若君に、戻る。
 悪い家老に、もちろん、抜群の安定感・月形龍之介! いいヤツやっても、悪いヤツやっても、演技の質がまったく変わらないのは、すごいことなんすよ。無意識過剰の、往年のスタアさんにしか、出来ないこってす。
 ちなみに、たしか、若き日の月形は、マキノのお姉さんと駆け落ちしたはず。
 若殿になったら、もう会えなくなるから、ひばりは、怒るすねるだだをこねる。しかし、恋しさが優って、藩に帰る錦之助を、いそいそ追いかけていくんだよね。
 街道を行く旅人渡世の錦之助。職人、若君に、続くコスプレの、楽しさ。
 彼を追いかける、ひばりの華やかさ。
 ゴージャス乙女、そんな言語矛盾を、らくらくと止揚するひばりの、濃すぎる乙女演技。
 濃厚な娘演技、って、ふつうは、なんだそれ、なんだけれども、ひばりなら、許せる。
 マキノ特有の、あるいは時代劇特有の、目線の揺らぎ、くねくねのしぐさ、直線的ではないたたずまいの様式美的至芸、その代表格が、マキノ映画のひばりであり、藤純子。 
 対する錦之助の、いき、いなせ、さわやかさ。
 歌いながら、何十人もの侍を斬って、斬って、斬る。スタアにしか出来ない。<ここは地声の錦之助の唄。
 マキノ映画の常で、みんな、歌う歌う。錦之助、賀津雄の、歌声はあまりに野太く、あからさまに吹き替えなのだが。まるで、インド映画みたいに。>ここは、錦あにぃ、吹き替え。つまり、統一は気にしないのだね。
 錦之助・ひばりで、かの傑作「鴛鴦歌合戦」をセルフ・リメイクして欲しかったなあ。マキノ語でいえば、リピートね。

by mukashinoeiga | 2010-11-28 08:12 | マキノ残侠伝 雅弘仁義 | Comments(0)

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