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吉田喜重「水で書かれた物語」浅丘ルリ子岡田茉莉子入川保則山形勲岸田森

 京橋にて。「映画監督五十年 吉田喜重」特集。65年、中日映画社、配給日活。
 いやあ、浅丘ルリ子が、めちゃくちゃかわいい。

 幼い童顔に、大人の色気の絶妙なブレンド、最強ですな。W主演(というより、ややメイン)岡田茉莉子も、一番色っぽいときか。
吉田喜重「水で書かれた物語」浅丘ルリ子岡田茉莉子入川保則山形勲岸田森_e0178641_19422671.png 母ひとり子ひとりの入川保則は、浅丘ルリ子と婚約、積極的に迫る彼女に対して、性的に消極的だ。「あたしを愛してないの」といわれ、困惑する。
 ルリ子の同級生が芸者になっていて、こちらには、積極的な、ふとん・イン。
 実は、入川の美しい母・岡田茉莉子が、実業家・山形勲と、世をはばかる、割りない仲。逢瀬を重ねている。その山形の実の娘が、ルリ子。
 美しい母の、愛人の、娘。だから、立たないのね(笑)。
 原作・石坂洋次郎。
 120分の映画だが、最近見慣れている大映定食番組監督の水準作(平均作)に比べれば、はるかにすかすか。大映以下、大映以上、という最近のぼくの映画評価基準から言えば、もちろん大映以下だ。
 特に、クライマックスで、突如として、幻想シーンというか、イメージ・シーンに、なるのね。
 ああ、だめだよ、吉田君。
 クライマックスで、いきなり、現実的シーンから、幻想シーンに変質する映画は、結構多いが溝口健二「雨月物語」鈴木清順「刺青一代」ほかの諸作しか、成功していない。
 現実から、幻想へ。その飛躍には、創造力の、力強いキックオフが必要なのだが、いかんせん、吉田喜重には、それが、欠けている。
 ここで示されるのは、ルリ子より、母・岡田茉莉子のほうが、入川にとって、強い性的対象であるという事実なのだが、それがいい悪いはともかく、単なる幻想シーンで暗示/明示するなんて、卑怯にもほどがある。しかも、幻想というには、あまりに凡庸で、成功していない。
 結局、松竹ヌーヴェルヴァーグの面々は、眼高手低。キャッチーな企画を立ち上げるプロデュース能力はすばらしいが、いかんせん演出力には、疑問が。
 ぼくは、夢見ているのだけれど。
 大島渚、篠田正浩、吉田喜重、このひとたちが、ジョージ・ルーカスみたいに、自分の監督能力に冷静に見切りをつけ、プロデューサーに徹していったら、どれほど、日本映画は、その豊穣さを、増していったか、と。この三人が、より、優れた演出力の監督たちを、プロデュースしていったら、たぶん、多くの傑作・快作が、生まれただろう。
 まあ、まさに、水で書かれた物語、なんですけどね。

 浅丘ルリ子が、夫・入川と、間男と、それぞれ、キスシーン、ベッドシーン。
 キスしながら、浅丘は、目を半開き。
 こういうシーンでの、日本映画のクリシェ、女性は目を閉じる、を見慣れている目には、実に新鮮。
 そういうシチュで、ルリ子は、目を閉じない習慣なのか。
 そういうシチュで、目を閉じないほうが、美しく見える、という女優の判断なのか。
 監督の指示なのか。
 ただ、時代ゆえか、ベッドシーンは、かなり少なく、それ以上判断できない。
 2シーンしか出てこない、茉莉子の夫・岸田森、水準的演技だと思うが、「イヤー、やっぱり岸田森は、かっこいいですよー」との、岸田森ファンの声。

by mukashinoeiga | 2010-10-26 23:16 | 旧作日本映画感想文 | Comments(0)

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