若杉光夫「川っ風野郎たち」

 阿佐ヶ谷にて。「昭和の銀幕に輝くヒロイン54・和泉雅子」モーニング特集。63年・日活。
 独立プロ系の若杉監督作だけに、日活としては異色のスタッフ。香山美子(ま、同姓同名の女優とは、別人だろうが)の原作を、中島丈博・脚本、音楽が大映イメージの強い渡辺宙明。大映の宙明音楽の不思議ちゃんぶりとはまた違う、いかにもリリカルな劇伴が、かえって、珍しい。
 さわやかカップルのコンビ作が多い、和泉雅子と、山内賢が、兄妹役というのも、珍しい。山内のガール・フレンド格には定時制高校仲間の、初々しい松原智恵子、山内もほかのクラスメートも、彼女を「馬場さん」と呼ぶ。「馬場さん」、この丁寧な呼び方、山内らは、大切に大切に「馬場さん」と呼ぶ。それだけで、初々しくて、いいよね。
 同じ年の「非行少女」同様、和泉は中三。大人びた顔立ちの美少女に中学生役は、むりなのだが(実年齢は、知らない)、「けんかえれじい」で旧制中学生を演じた高橋英樹同様、微妙に(笑)合ってるわけで。別に、ウラ公がいじめて演技を引き出さずとも、彼女は、もともと、うまいのだ。
 当時の、猫実~浦安~本八幡~船橋一帯のていねいなロケーションがたっぷりあり、それだけで、面白い。松原は一人暮らしをしたいらしく、「市川あたりまでなら、どこでもいいわ」という。結局船橋駅前の美容室に、見習いで住み込むことになる。「川っ風」の川とは、境川のことらしく、ここにあった「浦安橋市場」から、この映画は始まる。
 海苔採取の町・浦安。山内・和泉の父は、酔っ払って、ダンプに引かれる。死なれてみると、ギャンブルや飲み屋の付けがたまっていて、わずかな補償金も、はなから、消えていく。和泉は、高校へいけなくなる。そこから、ぐれていく。
 和泉の日活時代のメインの役柄は、明朗ホームドラマの明るくお茶目でドジな末っ子娘役が多い。そんな役もいいのだが、「悪太郎」二作、本作のような、落ち着いた役もすばらしい。
 山内の定時制仲間、周辺の大人たちを演じる(今では)無名の新劇役者たちも、すばらしく、これは、隠れた小佳作なのでは。何よりも、和泉雅子の面構え。
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by mukashinoeiga | 2010-07-04 22:30 | 傑作・快作の森 | Trackback | Comments(0)

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