神代辰巳「恋文」

 池袋にて。「没後15年 映画ファンに愛されつづける 鬼才・神代辰巳」特集。85年・松竹。
 妻子ある身でありながら、かつての恋人が余命半年と知るや、仕事も家庭もなげうって、元恋人に、献身的に看病する。
 ついには、妻とも離婚し、元カノと結婚式。その数日後に・・・・。
 夫にショーケン。妻・倍賞美津子。元カノに、高橋恵子。ある意味、男のロマン?を実行してしまう夫。当然割り切れない感を残しつつ、結局はその夫を、元カノの元に送り出す妻(「半年間だけ。あの人が死ぬまでだよね。そうしたら、戻ってきてくれるんでしょう?」)。当時最高の美貌の高橋恵子。見事なトライアングル。
 倍賞と結婚して10年、夫婦としては苦渋の決断?を実行するショーケンは、絶えず妻に向かって、顔をゆがませて、泣き笑いの表情。
 ああ、ショーケンお得意の、泣き笑い顔、なんだけど、こういうのが「可愛い!」って、通用するのは、子供か若いうちだけなんだよね。何の汚れもない、つるつるお肌で、天然に、泣き笑いするから、許されるので、いい年こいてエントロピーありまくりの顔で、「天然」な泣き笑い顔されてもねー。天然には、もう見えないつう。
 しかも二三度程度なら、まあ、ご愛嬌だが、あまりにしつこく何度も何度も、繰り返されると、ショーケンよ、決め技は、数少ないほど効果的なんだよ、といいたくなるぞ。若い頃は天然顔だったけれど、もう、お手の物のキメ技扱い、手練手管(略して、テク)に随した、天然、なんて。
 ああ、こうして、ショーケン(昇・健)は、シモケン(下・健)に、なっていくんだなー。あ、シモケンさん、ごめん。
 石井輝男監督をドキュメントする映画に、証言者として、出てもいい高倉健さんは出ず、健さんの名代でシモケンさんは、出るということらしい。やるなあ、健さんの名代、なんて。
 閑話休題。
ショーケン「(子供の頃の)俺のかーさんと、そっくりな顔になってる」
倍賞「あたし、あんたの母親じゃ、ないわよ」
 泣き笑いの子供めいたショーケンと、野太い声の倍賞は、確かに母・子関係を擬態せざるをえない。しかし、女の部分を見せて、倍賞は、それに抵抗する。ショーケン代わり?に利用される、間男ならぬ、お間抜け男に、小林薫。
 一見、夫と妻の<大人の関係>を、描くと見せて、きわめて日本的な、擬似母子関係に収斂してしまう、そこに、とっちゃんぼうやなショーケンの、泣き笑い顔、ということか。
 結局、男は、どっしり妻にも、きっぱり元カノ/現カノにも、勝てませんや、ってことか。
 ロマンポルノ時代の神代を決定付けた、姫田真佐久撮影の、流れるような、のたくるような、全自動的蠕動映像が見られないのが、つまらない。まあ、ないものねだりか。ただ、いかにも通俗的なメロドラマメロドラマした、うるさいだけのBGMには、違和感を覚えるだけ。
●追記●ショーケンが留められる、留置場に、どすの利いた、凄みのあるおっさんが、いて、これが、なんと、工藤栄一。うーん、脇役役者としても、さまになってるぞ。
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by mukashinoeiga | 2010-06-27 08:17 | 神代辰巳猥歌 揺れた俗情 | Trackback | Comments(0)

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