谷口千吉「吹けよ春風」

 阿佐ヶ谷にて。「東宝娯楽アクションの雄 谷口千吉監督の仕事」特集。53年、東宝。
 長い。特集タイトルが長すぎる。タニセンが、いまでは、一般にはさほど知られていないゆえ、解説調で長くなるのだろうが、なら、いっそ、
 「東宝B級娯楽アクションの雄・世界の巨匠黒沢明の盟友・水木洋子/若山セツ子/八千草薫の 谷口千吉監督の仕事」特集、と、すべきだったかも。ま、それは、ともかく。
 日曜に見たら、狭いラピュタが超満員。
 これは、めったに上映されないレアもの/フィルムセンター所蔵プリント使用のため、上映回数が普段の半分初日で日曜脚本が黒沢明&タニセン・・・・要は、黒沢人気だったのね。
 フイルムセンター所蔵プリントを使うということは、戦後メジャー作品に関して言うと、元の会社(この場合は東宝)が、自社プリントを、わざわざ焼いて、保管するに及ばず、と判断したためだろう。興行価値も作品価値も、ない、と判断されたのだ。
 タニセンよりもっとひどいのは、8月の新文芸坐「巨匠・内田吐夢の全貌」特集だ。全17本中9本が、フィルムセンター所蔵プリント。今は忘れられた、かつての人気監督、内田吐夢への、まあ、資本の論理からいえば、避けられない、東映の不遇扱い。しかし、フィルムセンターも、事業仕分けを意識しているのか?、名画座へのプリント提供自体は、とても、好ましいことで。
 枕が長くなった。やっと、映画自体の感想だ。
 好漢・三船敏郎が、人情厚いタクシー・ドライヴァー。時には、まあ、映画ではそういうエピソードばかり出てくるのだが、だから、映画としては、いつも、三船運転手は、稼ぎ度外視で、乗客のそれぞれのドラマに、付き合うのだ。こんな客でもないような客なんて、ほっといて、次の客を拾えば、タクシー・ドライヴァーとしての稼ぎは、増えるのに。
 しかし家出少女・青山京子、息子を亡くした老夫婦・小川虎之助と三好栄子、ムショ帰りの山村總と山根寿子夫婦、ほかに印象に残るのは、おねえ言葉のタクシー強盗・三国連太郎、ああ気色悪い(笑)。車の窓から出て、屋根を乗り越え、反対側の窓から再乗車する酔漢・小林桂樹、さらには三船と「黄色いリボン」の替え歌を歌う越路吹雪。
 三船の好漢ぶりが、とことん微笑ましい、一篇。ああ、三船は、いいなあ。三船の唄いっぷりも、いいなあ。
 冒頭、小泉博と、タクシー後部座席で濡れ場を見せる、岡田茉莉子。若い女優にあっては、清純派全盛の中で、こういう、軽い、お色気要員扱いの、岡田茉莉子。まあ、東宝から松竹に移るわけだよねー。
 重厚・黒沢が脚本にかかわりつつ、あくまで、明るく、軽い、タニセン人情コメディーなのであった。見ている間は楽しいが、ま、印象には、残らないわね。
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by mukashinoeiga | 2010-06-23 23:47 | 旧作日本映画感想文 | Trackback | Comments(0)

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