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鈴木則文「エロ将軍と二十一人の愛妾」渡辺やよい池玲子林真一郎三原葉子安倍徹杉本美樹田中小実昌由利徹岡八郎

 池袋にて。「鈴木則文・映画まつり」特集。72年・東映。
鈴木則文「エロ将軍と二十一人の愛妾」渡辺やよい池玲子林真一郎三原葉子安倍徹杉本美樹田中小実昌由利徹岡八郎_e0178641_2384073.png 越後の貧農のせがれ・角助(林真一郎)が、江戸に上京、十一代徳川家将軍にうり二つゆえ、将軍の身代わり・影武者として、大奥で愛妾たちとウハウハ、という艶笑モノ。
 当時の人気宰相・田中角栄を揶揄したものであることは、いうまでもない。演ずる林真一郎は、顔にもガタイにも厚みのある、古いタイプの二枚目で、なかなか好演する。
 おかしいのは、将軍不調の体裁をつくろうため、角助を替え玉にして、世間を欺く、ワル老中・田沼意次役の、安倍徹の顔が、今からすると、どうしても、同じワル・小沢一郎にしか見えないところか。クチをへの字にした、顔のワル筋肉まで、クリソツ。小沢一郎、伝統的なワル顔だったのね。
 とにかく、出てくる女優は、みんな、脱ぐ。全員、脱ぐ。角助の幼馴染・渡辺やよいみたいな、清純派も、脱ぐ。
 ずらりと居並ぶ、大奥の女たちも、全て、脱ぐ。もっとも、エキストラ女優の顔は、眉毛が薄い、目付きにケンのある、スケバン顔が多いのは、この時期の東映らしいところで。
 京都から将軍に降嫁してきた、宮家の娘が、「さすが、品のある」といわれるのが、どう見ても、お品のないお顔の杉本美樹、というキャスティングは、ギャグか。もちろん、やんごとない杉本美樹も、脱ぐ。
 女ねずみ小僧・池玲子が、楽しい。
 則文組レギュラーの珍演も楽しい。
 由利徹が中国からの使節・毛沢山(もうたくさん)、同じく岡八郎が珍万高(ちんまんこう)。「パンタ」なる、白黒の珍獣(小人二人がパンダの着ぐるみ)を、献上する。この珍獣、特技はバター犬、三原葉子(これまた則文組)をアヘアへさせる。バター犬的珍獣役に、小人を当てる、エグさと安直さが、いかにも、東映ですねん。
 則文組にかかせない、田中小実昌も、前将軍に扮し、これまた当時話題の「恍惚の人」を珍演する。
 なお、大名行列、大広間に居並ぶ武士たち、のショットになると、画調が古めかしくなるのは、全盛期東映時代劇のストック・フィルムを流用しているため。低予算エロ映画も、大規模なエキストラ・ショットを得ることが出来るわけだ。

 日活ロマンポルノが、超低予算で、四畳半世界の物語や、半径数百メートルの青春や情事を描くとすると、東映エロチック路線は、そういう<隠微な密室劇>を、描く方向には、行かない。
 大人数の出演者、何十人ものエキストラたちがいっせいに脱ぐ、豪奢?さ。もっとも、ぼくは、スケバン女優が、集団脱衣しても、何にも、カンジないのだが。アレにエロを感じるのが、東映の感性か。
 東映お得意の裸の羅列、この<裸列>が、あればあるほど、エロスの隠微さは消えていく、と思うのだが、東映、好きだよねー、裸の羅列が。
 ぼくが知る限りでは、前の鈴木則文「聖獣学園」の、共同脚本の、関本郁夫の佳作「処女監禁」のみが、半径数百メートルの青春や情事を描いた、東映映画だった。もっとほかにもあるかもしれないが、ぼくの見た限りでは。
 そして、東映エロ映画には、必ず、グロかナンセンスのどちらかが、つき物。時には、グロとナンセンス、両方、つく。必ず、つく。例外は、これまた、「処女監禁」か。
 そして、東映のグロと、ナンセンスは、ぼくの好みとは、あまり波長が合わない。東映のエロも、エロに感じないのだから、もう、エロは捨てて、東映エロチック路線を見ることに、なるわけで。
 東映の想定するエロ対象、こちらのほうが、より一般的なのか。う~ん、よくわからない。

by mukashinoeiga | 2010-05-23 07:40 | 不良スズキ伝ソクブンみみず芸者 | Comments(0)

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