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山村總「母子草」

 京橋にて。「生誕百年 映画女優 田中絹代」大特集。59年、東映東京。
 本特集も第二部の戦後編に移って、大部分は既見作。未見のものを拾っていきたいが、この作品はなかでも見たかったものの一つ。山村總の監督作に外れがないからだ。
 静岡県のある町でのロケがメイン。とにかく、町のどこからでもきれいなきれいな富士山がまるっと見える。いつも日本晴れの富士山なのがお約束。現在では静岡の地にも高層ビルが出来て、こんなにすっきりとは見えないだろう。静岡の「県画」の資格あり。
 この町で、個人で洋裁の仕立て屋をしている寡婦が田中絹代。量をさばかなけばいけないエプロンなどの安い量産品の下請けで、いまなら中国が一手に引き受けている類だろうが、だんだん<どこかのお嬢様>が着るようなワンピースなども手がけるようになる。ついこの間まで、若いアイドルの絹代ちゃんを見ていたのに、すっかり苦労人の母が板についている。
 彼女には三人の子供がいて、長女が高校生の佐久間良子。その二個下の弟に水木襄。ついこの間神保町で見逃した「故郷は緑なりき」61では、確か高校生カップルになるふたりだ。
 この佐久間良子が、美しい。後年の妖艶な薄幸の女を演じるそのままの顔で、清純派も似合っている。ただ、彼女に限らないが、東映に所属していた美人女優の常で、作品には恵まれず。東宝も女優を育てないけれど、松竹かせめて日活だったらねー。
 水木は二年連続で大学受験に失敗。近所のおばさん・高橋とよが「また、落ちたんだってねー」とあたりかまわず大声で言うのが、笑わせる。佐久間の高校時代の先生に山村總自身。
 佐久間良子は教師になるべく静岡大学に進学。ただ、課程が二年。この当時の小学校教職課程は二年だったのか。
 教師になると、教え子のひとりの女の子は、母を早くになくして、母のあるクラスメイトに何かと意地悪。「やっぱり男親だけでは、行き届かなくて」という彼女の父に見初められて、プロポーズされる。佐久間もまんざらでない感じ。まあ、この男親が木村功だから、しゃあない、か。
 という、あまり気のない感想のとおり、山村總監督作としてはいささかイマイチ。すっかり職人監督に徹しているなあ。うまいんだけど、それ以上でもない。でも、寄る年波か、お定まりのお涙頂戴には、ついつい泪目にはなるのですが。

by mukashinoeiga | 2009-11-27 23:26 | 舟木一夫と60年代アイドル | Comments(0)

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