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チーム黒沢と黒沢ブランド映画の関係

 黒沢映画の全体を見てみよう。
 以下のリストで、個人的評価で◎は傑作、○は佳作、×は問題外、△は可もなく不可もないが、どちらかというと否定寄り、-は評価不能。「虎の尾を踏む男達」は、音声不良のプリントで見ただけなので、ほとんどせりふが聞き取れず、実はどういう話かすらもわかっていない。

1○「姿三四郎」         
1△「続 姿三四郎」
1-「一番美しく」
1-「虎の尾を踏む男達」
2○「わが青春に悔なし」
2△「素晴らしき日曜日」
2○「酔いどれ天使」
2○「静かなる決闘」
2○「野良犬」
2○「醜聞(スキャンダル)」
2○「羅生門」
2○「白痴」
3○「生きる」
3◎「七人の侍」
3○「生きものの記録」
4×「蜘蛛巣城」
2×「どん底」
4○「隠し砦の三悪人」
5△「悪い奴ほどよく眠る」
2○「用心棒」
3○「椿三十郎」
4◎「天国と地獄」
4○「赤ひげ」
3×「どですかでん」
2○「デルス・ウザーラ」
2×「影武者」
3×「乱」
1×「夢」
1△「八月の狂詩曲」
1×「まあだだよ」

 といっても、かなり昔見たきりの作品も多々あり、今見直してみれば評価は変わるかもしれないが。
 それぞれの作品に付した数字は、脚本家の数。つまり、1は、黒沢明含めて1名の脚本による。つまり、黒沢本人のみの単独脚本。2~5というのは、黒沢含めて2~5名の脚本チームによる作品。召集されたのは、久坂栄二郎、小国英雄、橋本忍、などなどのテダレである。初期と晩年の作が、黒沢ひとりというのがはっきりわかる。これをグラフにすれば、ほぼ真ん中を頂点とした、かなりはっきりとした山形を描くことがわかるだろう。
 まあいささか杜撰にざっくり言ってしまうと、黒沢一人が書いた脚本が仮に<黒沢度100パー>とすれば、チーム黒沢が書いた脚本は、相対的に<黒沢度>は下がるはずのものだろう。しかし、一般に、<いかにも黒沢らしい映画>を聞いて回れば、彼一人が書いた脚本の映画よりも、チーム黒沢が書いた脚本の映画になることは、火を見るよりも明らかだ。
 つまり一般に、より<黒沢ブランド>の映画とみなされる作品群は、しばしば<黒沢度>が、低い映画のことなのだ、と。強引に言ってしまうと、黒沢が単独で書いた脚本は、いわゆる<黒沢映画らしさ>が、希薄になる印象なのだ。
 しばしば<男騒ぎの映画>と称され、<女性を描けない>とも言われる黒沢映画が、珍しく女性を主人公にした映画が「一番美しく」「わが青春に悔なし」「八月の狂詩曲」と、初期・晩年に集中している。壮年期の<いかにも黒沢ブランド映画>が<男騒ぎ>で、しかし実は女性率が高い映画が、ほぼ黒沢一人の脚本というのも興味深い。
 生涯唯一撮った女性のヌードが、「八月の狂詩曲」村瀬幸子のおばあちゃんヌードというのも、非常に興味深い。もともと村瀬幸子自体も、若いころからお色気とは無縁の女優で、若くして老け役の印象の深い女優だ。
 「赤ひげ」で、柄にもない色情狂の女を演じ、「悪い奴ほどよく眠る」「天国と地獄」「まあだだよ」と愛用された香川京子は、もちろんスタア女優のなかでは、仲間由紀絵と並ぶお色気ゼロ女優。
 どう見てもおばさん顔、おばさん声、おばさん体型の中北千枝子を<清純な乙女>に起用する感覚(「素晴らしき日曜日」)。それなりにすれた踊り子の役に16歳の小娘・淡路恵子を起用する感覚(「野良犬」)。
 その映画のなかで、もっともお色気要員に千石規子を起用する感覚(「静かなる決闘」)。男の子みたいな、上原美佐(「隠し砦の三悪人」)小田切みき(「生きる)矢口陽子(「一番美しく)の起用。つまり、黒沢は一貫して女おんなした女優を忌避している。それは何を意味するのだろうか。



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by mukashinoeiga | 2009-09-23 19:35 | 黒沢明 黒い沢ほどよく明か | Comments(0)

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