IE9ピン留め

木村恵吾「惜春」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.3 新東宝篇-映画保存のための特別事業費による」特集。52年、新東宝。本特集で、あと1回上映。
 流行歌手・笠置シヅ子と、平凡なサラリーマン・上原謙の夫婦の物語。
 前半の、笠置主演パートは、いかにも笠置らしい、騒々しくも楽しいミュージカル・コメディー風。笠置のリハ風景で、歌って躍る彼女のエンターティナーぶりが楽しめる。夫の上原も、ドタバタ演技に付き合い、結構柄に合っている。コミカルな演技も外さない上原のスマートぶり。
 で、妻の笠置が大阪に長期公演、騒々しい妻の留守の間の一ヶ月間は、とたんに、上原お得意のメロドラマ風となる。
 妻がお手伝いまで連れて行ったために、上原の食事の世話など、臨時に雇われた、山根寿子が、通ってくる。ガチャガチャピンの笠置と違って、家庭的でおしとやかな山根に、上原、ぞっこん。
 上原謙、笠置と山根の二律背反、いかにせん。そういう、プログラム・ピクチャア。
 なに、前半と後半のティストが、まるで違う? 多少いい加減でも、そこが、プログラム・ピクチャアの醍醐味や。
 上原が朝の出勤風景の駅前は、リアルにロケ。夜、上原が山根を送っていく駅前は、セット。単に出勤するだけの朝と、しみじみ愁嘆場のある夜とでは、また、演出意図が違うということか。実景ロケと、セットで、同じ町の朝と夜を再現する。
 朝は実写だから、ちゃんと電車が写る。夜はセットだから、電車は、通過する光と音で表現。このあからさまな違いの描写も、二律背反で、なんとなく楽しい。
 上原、山根、斎藤達雄など、松竹戦前組の、なにげな活躍も楽しい、新東宝映画のよさ。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-29 23:16 | 旧作日本映画感想文

今村昌平「カンゾー先生」

 渋谷にて。「柄本明の流儀。」特集。98年、今村プロ、東映、東北新社、角川書店=東映。
 なかなか、エネルギッシュな快作。「黒い雨」などは、今村らしからぬ、おとなしやかな、優等生ぶりっ子だったが、本来の、全盛期の今村が、帰ってきた感じ。
 ただし、ぼくは、今村的ベクトルには、体質的に共感は出来ない。えらい、がんばってはりますなあ、とは思うが、ちょっと、覚めた目で、見ては、いる。
 製作当時に読んだ記事では、確か、本来は、三国連太郎あたりの主演で製作に入ったが、三国が途中降板、新たに柄本明主演で、制作されたという。実際に映画を見てみりゃ、そりゃそうだろう、三国は降板するだろうという内容。
 岡山の漁村の田舎町、その町医者の主人公・柄本明は、とにかく、走る走る。町医者のキモは、足だ、という額も掲げて、走る走る。これは、年配の三国には、とうてい無理な演技、というか実技で、で、それで降板になったのだろう。今村、三国をキャスティングすることが無茶や。逆に言えば、パワフルな壮年である柄本明を主演にすることによって、イマヘイも、メーター振り切った演出が出来るようになったのだろう。
 主役になればなったで、脇役演技とは違う<主役演技>に徹し、柄本明も絶好調。主演・演出の相乗効果が、最高度に発揮され、音楽・山下洋輔の、ご機嫌ジャズも絶好調。<注>
 たいへん素晴らしい。ただし、根本のところは、ぼくの趣味ではないけどね(笑)。
 まあ、多少の誤解もコミでいえば、今村昌平には、小沢一郎のにおいがあるのね(笑)。
 東京出身なのに、東北志向(ま、ちょっと、ふたりでは、ビミョーに、違うけどね)。今村昌平は、現役の映画監督時代は、まあ清貧だったろうが、日本映画学校の校長・経営者になると、とにかく授業料がばんばん入る、ばんばん現金が入ってくる、これまでの清貧時代とは比較にならない現金が入ってくる、ということで、学校をもっと広くして、さらに現金収入を倍増したい、と土地を探し回った、まあ、ミニミニ小沢一郎というのは、強弁か。
 柄本明はいいのだが、彼の共同者・ポン中の同僚医の、世良公則が、シロウトとしては、かなり、がんばっているが、スーパーではない。ここは前年の今村昌平「うなぎ」の役所広司であって欲しかった。
 そして、本作は、麻生久美子の実質デヴュー作と記憶するが、かなりいいんだけど、かつてのイマヘイ・ヒロイン、左幸子、春川ますみ、沖山秀子と比べると、かなり細い。細いなりにがんばっているが、どうなの、この細さは。イマヘイ的には、納得するところなのか。イマイチ、よく、わからないまま、がんばっている麻生久美子には、まあ、感心するが、それは、ベクトル、違うだろう、とも思う。
 しかし柄本明「空がこんなに青いわけがない」でデヴューする夏川結衣より、はるかに幸福な麻生久美子だろう(笑)。
 絶頂期とろとろの、料亭女将松坂慶子も、快。ヘンタイ田口トモロヲも良し。
<注>この映画、かなり音質がよい、普段モノラルばかりの旧作映画のシネマヴェーラも、耳を見張る?再生力。あきらかに、公開当時の東映系劇場よりいいので。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-28 21:53 | 旧作日本映画感想文

柄本明「空がこんなに青いわけがない」

 渋谷にて。「柄本明の流儀。」特集。93年、オフィス・シロウズ、サントリー=アルゴ・プロジェクト。
 今のところ、柄本明ゆいいつの監督作品か。夏川結衣のフィルム・デヴュー作でもあるらしい。柄本「監督」は、出演せず、演出に専念も、好感が持てる。
 主演・三浦友和は、おそらく、もっともいい時代の二枚目ぶりを、フィルムに残している。
 山口百恵との共演時代は、若さゆえの、リンパ腺?過多な、<妙に脂ぎった感じ>で、ぬめぬめして、気持ち悪かった。今現在は、肩の力も脂も抜けたが、妙に、インパクトがない。
 本作の三浦友和が、ぼくには、いちばんいいように思える。すっきりさわやか、あくもない、ぬぼーっとした、二枚目。ただし、映画は、シマらないので、出演者は損をしている。

 三浦友和は、中堅サラリーマン、会社の女の子の夏川結衣と浮気中、というか、振り回されている。
 妻・岸本加代子は、自宅をマンションに建て替えることに夢中。その前段階として、義母のガラクタが満載の物置の掃除に夢中。この物置処理シーンに、柄本明はかなり力を入れていて、ドタバタ仕立て、でも、ちっとも、面白くない。監督としての柄本明に、ドタバタシーンは、無理、才能がない。
 同じく、三浦・夏川の痴態ドタバタ・シーンも、本人は力を入れているのかもしれないが、まったく面白くない。才能ゼロ。シロウト監督の無残さを、ひたすら、露呈し続ける。オフィス・シロウズならぬオフィス・シロウト。

 三浦の老母・久我美子。ボケ老人と化しつつある彼女だが、笑顔は、やはり、最高に、可愛い。そして、この天性のアイドル女優に、この明朗明晰なアイドル女優に、次第にボケていく、という<性格俳優向きの演技>は、とうてい、こなしえないのも明らか。というか、明らかに、資質が違うのだし、久我美子の美質と、本作の演技に必要な、複雑なグラデーション演技は、まったく水と油なのであり、そもそも、この役に<永遠のアイドル女優>久我美子をキャスティングすること自体が、間違いなのだ。
 なんせ、デヴューの頃の黒沢明「酔いどれ天使」で、重篤な結核患者の役ですら、これ以上ないくらい健康な、ぷっくら美少女のままだった、筋金入りのアイドル女優なのだ、久我美子は。
 どこまでも、間違い続ける映画。

 夏川結衣、監督の柄本明に怒られ続けた、という記事をなんかで読んだような記憶があるが、これは、明らかに、夏川結衣に罪はない(笑)。明らかに、柄本明カントクに、無理があるのだ(笑)。
 夏川の役は、きわめて感情が波乱万丈すぎる、エキセントリックなザ・オンナ。しかも、リアリズム演技ではなく、きわめて、かっとんだ役で。こんな、複雑怪奇な演技、ポット出の新人女優に、要求すること自体が、間違っている(笑)。さらにいえば、この演技、おそらく、成功したとしても、まったく面白くないだろう、独りよがりな、凡庸さ。柄本明演出に、無理があるのだ(笑)。
 どこまでも、間違い続ける映画。

 そして、今は、ほぼ、完全に見なくなった、恥ずかしい、映画愛(笑)。80~90年代の、中途半端な自称<映画愛>シロウト監督には、たびたび見られた、<小津リスペクト>。
 三浦一家の日本家屋。雑然と物が置かれた廊下、部屋部屋のエンプティ・ショット、フィックス固定カメラで、何回もなんかいも。
 ああ、恥ずかしい。醜悪。なぜ、醜悪か、わかっているのか、<中途半端な映画愛>シロウト監督どもよ。
 彼らは、実際の建築物である、「貧しげ」な日本家屋をロケセットとして使用し、いや、ごくふつうの日本家屋なのだが、それは、撮影用に設計されたものでないゆえに、実際に撮影すると、「貧相」にしか、見えない。
 しかも、貧相な(撮影用に特化された照明でないという意味で)自然光の元に撮影されている。
 小津映画の日本家屋は、微細な撮影用調整が可能なステージ・セットで、しかも、微細な調整が可能な照明のもと、厳格に管理されたショットが撮影された。それゆえに、絶妙な緊張感とあたたかさが、並存した、奇跡的な小津流エンプティ・ショットの数々が生み出された。
 それを「再現」しようとした、80~90年代の、中途半端な自称<映画愛>シロウト監督には、(映画撮影的には)凡庸な、ありもののロケセット、ありものの自然光、それで小津の厳格な管理下のショットを再現しようとするのだから、噴飯としか言いようのない、緊張感のない、だらけた、恥ずかしい、小津オマージュになるのは、やむをえない。
 どこまでも、間違い続ける映画。

 あと、これは、映画的ミスというわけではないのだが。
 夏川結衣はじめ、若い女性たちは、濃い太い眉毛、濃い口紅、時代の流行に左右された、今では古臭いシルエットのファッションで、身を固めていて、今では、ひたすら異質な、姿をさらしている。かえって、その独特な顔の、すっぴんな岸本加代子や、夏川結衣ほど美人ではない、エキストラたちのほうが、普遍な化粧法だったりして。

 映画的才能を徹底的に欠いた、あだ花監督の、凡庸な、しかし、何か、エキセントリックな映画を、(中途半端な)映画愛に満ちた映画を作りたい、というシロウト監督の、凡庸な思い上がり。
 そんななかで、三浦友和の、ぬぼーっとした、存在感のみが、普遍のアイドル女優・久我美子の存在感のみが、光る。 無神経な岸本加代子も、また、監督の凡庸さを、回避する。
 コメディエンヌ・夏川結衣の輝きは、まだ、見出せない。
◎追記◎なお、ほんのワンシーンのみ出演の、個々の脇役が多数出演しているが、さすが、俳優出身監督の強みか、小劇場系を中心として、現在の有名俳優が、多数、その若き日の姿で、出演。台詞のある役者は、全員、知っている、という、稀有なキャスティング。
◎再追記◎製作に、最近再評価の機運の相米慎二、したっぱ演出部に成島出(最近監督作「連合艦隊司令長官 山本五十六」)が、クレジットされている。
 なお、成島出監督、夏川・柄本共演作としては「孤高のメス」などもあるが「油断大敵」が、最高。柄本・夏川最高のコメディ演技、夏川結衣の太もも(笑)最高においしそうなのね。今回の柄本特集で「油断大敵」がないのは、シネマヴェーラの見識を疑うレヴェル。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-25 23:05 | 旧作日本映画感想文

「八百屋お七 ふり袖月夜」について、ふたたび

 フィルムセンターのホームページの、「所蔵映画フィルム検索システム」に、たしかに同映画はリストアップされております。
 ただし、

フィルム詳細
製作会社 東映(京都)  製作年月日 1954  形状 16mm  配給 東映
ジェネレーション 上映用ポジ  カラーの種類 白黒
サウンド トーキー(エリア1本)  フィート長 306.07  時間 9

 16ミリの上映可能なプリントのようですが、本来93分のはずの上映時間に対して、9分表示。
 つまり、おそらくは、当時映画マニア向けに市販されていた、16ミリ短縮版のようです。
もし、仮にフィルムセンターで上映されるとしても、「断片」と表記される類で。ですから、これを原版として、DVD等が発売される見込みは、まずないと思われます。うーん、残念。
 フィルムセンターが公式に上映するとすれば、「断片」ですから、期待できるのは、たとえば「美空ひばり生誕100年特集」かなあ。いや、これは、その頃、フィルムセンターが存在していれば、確実に特集は、組まれるかと思いますが、それまで、わたくしは・・・・(笑)。
◎追記◎あまり期待は出来ませんが、非公式な上映を要請できるのは、たとえば、ひばりプロダクションが、断片でもいいから、見せてくれ、とウチワの上映を求めるくらいかなあ。うーん。
◎再追記◎本日、映画を見にフィルムセンターへ行ったのですが、ついでに、ロビー常備の所蔵映画リストの本を見てみたら、ネットにはない四文字が、ありました。
 上映不可。うーみゅ。
 フィルムの経年劣化により、上映(映写機に通すこと)に、耐えられない、と判断されたもののようで。駄目押しですね。フィルムセンターには、きれいで、オリジナルそのままの長編の、美空ひばり映画のフィルムが三十本ほどあるので、さして特徴のない、9分程度の超断片を、わざわざ大金(税金)を使って、ひとこまひとこま、クリーニングして、修復して、リプリントすることは、おそらくないでしょう。
 しかし、ぼく的には、ひばりさんの八百屋お七、ベスト・キャスティング、見たかったなあ。きっと、ぴったり。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-22 10:04 | 旧作日本映画感想文

松田定次「八百屋お七ふり袖月夜」kanoさんへの、お返事

 兄弟ブログ<新・今、そこにある映画>にて、kanoさんから、質問をいただきました。
 松田定次「八百屋お七ふり袖月夜」は、フィルムセンターにあるのか、映画は見られるのか、というご質問です。これは、その返事です。
 なお、こちらへのお返事は、できれば、★映画流れ者★までに、お願いします。

kanoさん、ども。
「八百屋お七ふり袖月夜」について、フィルムセンター・サイトで検索したら、見つかりませんでした。ということは、フィルムセンターには、ないのか。
 なお、たいへん長くなりましたので、このコメント欄では、字数制限に引っかかりました。以下は、<昔の映画を見ています>に、書かせていただきます。
そちらをご覧ください。すいません。
 ここで、さらに検索すると、背寒さんという、錦之助ファンのたいへん、詳しいブログ「錦之助ざんまい」を発見。錦之助も、「八百屋お七ふり袖月夜」に主演しているということで。少し、長くなりますが、引用します。

 錦之助が出演した昭和29年から33年までの作品の中には、(A)マスターポジはあってもネガがない作品、(B)マスターポジもネガもない(と言われてる)作品があって、これらの作品が不幸なのである。
 (A)の作品は、ニュープリントを制作する費用が、120万~150万円になる。マスターポジから新たにネガを作るのに100万円以上かかってしまうからだ。私の知るところでは、(A)の作品には、『紅顔無双流 剣は知っていた』『江戸の名物男 一心太助』『風と女と旅鴉』『恋風道中』『紅顔の若武者 織田信長』『あばれ纏千両肌』などがある。
 (B)の作品は、永久にスクリーンでは観られないもので(ビデオ化もされず、東映チャンネルで放映したことのない作品は、絶対に観られない)、ニュープリント制作も不可能である。『唄しぐれ おしどり若衆』『唄こよみ いろは若衆』『八百屋お七 ふり袖月夜』『満月狸ばやし』の4本がそれである。(東映の倉庫にネガかポジが埋もれていていつか発見されることを祈っている。)
 
 ところで、前回のブログで書いたが、この2年で、錦之助の映画のニュープリントが24本出来た。そのうち16本は長年スクリーンで観られなかった作品である。これらはすべて、ネガがあったからニュープリントを作れた作品だった。 
 
 今回錦之助映画ファンの会が東映に依頼して焼いてもらったニュープリントは、『殿さま弥次喜多 怪談道中』(1958年、85分)と『忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻』(1959年、183分)の2本である。制作料は、90分のカラー作品で1本約20万円。したがって『怪談道中』は約20万円、『忠臣蔵』は3時間の長尺で2本分あるから、約40万円。消費税を加えると、総額63万円になる。
 この費用を錦之助映画ファンの会が寄付金を集めて東映に支払うのであるが、東映は上映用プリントのない古い映画のニュープリントをめったに自社の経費で焼いてくれない。だから、ファンの会が金を出して、焼いてもらい、出来たニュープリントは東映に寄贈している次第なのだ。これまでファンの会で6本のニュープリントを東映に作ってもらったが、120万円近くを東映に支払っている。今回の63万円を合せると、ニュープリント代の合計180万円を東映に寄付したことと同じわけである。
 
 こうした事情を書くと、バカなことをやっているとお思いになる方がいるかもしれない。そう思われる方は、東映の台所事情も、現在の東映という会社の過去の遺産に対する考え方も、知らない人だと言わざるを得ない。
 
 ニュープリントを焼いて、映画館に2回貸し出せば、元が取れるのに、東映はそうしたビジネスを決してやらないのだ。昭和30年代の東映時代劇全盛期の映画に対する認識も欠けているし、古い映画はニュープリントを作っても上映機会がないので採算が取れないと考えているようだ。ニュープリント制作に関して東映ほど消極的な会社はない。あれだけたくさんの時代劇映画を作ったのに、現在映画館で上映できない作品が山ほどあるのはこうした訳である。
 大映作品のフィルムと著作権を買い取った角川映画は、昨年暮から始まった「大雷蔵祭」で市川雷蔵の映画を四十数本も自社費用で制作し、上映しているが、私は雷蔵ファンをうらやましく思う。角川映画は、明らかに雷蔵出演作は商売になると踏んで、会社が率先して上映活動を推進している。また、昭和30年代の映画は、東映より松竹や東宝の方が上映用プリントを所有していると思う。東映時代劇映画ファンとしては残念な限りである。
 
 ついでに書いておくが、錦之助映画ファンの会が金を出して作ったニュープリントをなぜファンの会が所有できないのか?なぜ東映に寄贈してしまうのか?ということである。この疑問にお答えしておく。まず、映画作品というのは映画会社が著作権を持っていて、許可なく作品の複製はできないし、複製したものを上映することはできないという法律がある。フィルムセンターや京都文化博物館など公の機関が所蔵している上映用プリントは、原則として館内のみの上映という契約で、しかも上映権つきなので1本につきはるかに高額の費用を税金を使って支払い、映画会社が作ったものなのだ。フィルムセンターが他の映画館に特別に貸し出す場合には、フィルムセンターの審査と同時に、著作権主である映画会社の許諾が必要になる。昨年の錦之助映画祭りではフィルムセンター所蔵の上映プリントを何本か借りて上映したが、所定の手続きを取り、東映の許諾をもらって上映したわけである。
 錦之助映画ファンの会が東映本社に依頼しているニュープリントは、実際には東映系列の東映ラボ・テックという会社で制作しているのだが、東映本社から東映ラボ・テックにニュープリント代の見積りを取ってもらい、その金額を払うことにしている。つまり、東映本社が制作するのと同じ額を払っているわけで、ニュープリントを寄贈する条件でなければ、東映は決してニュープリントを作ってくれないことは言うまでもない。 
 レンタル業者や個人が所有する上映用16ミリフィルムについては、著作権の考え方や上映方法に難しい問題があるので、回を改めて書きたいと思う。

 引用終わり。ということで、背寒さんによれば、kanoさん、お探しの映画は、失われてしまっているようで。残念です(泣)。ですが、また、さらに、詳しく調べて、見たいと思います。
 背寒さんも書いているように、日本のメジャー映画会社のなかで、東映というのは、もっとも、過去の自社資産を大切にしない、バカヤロー会社です。
 先に書きましたように、このモンダイは、もっと調べて生きたいと思います。背寒さんのブログも、いろいろと貴重な証言もあり、早速お気に入りに登録しました(笑)。

# by mukashinoeiga | 2012-01-21 20:36 | 旧作日本映画感想文

石井輝男「リングの王者 栄光の世界」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.3 新東宝篇-映画保存のための特別事業費による」特集。57年、新東宝。本特集で、あと1回上映。
 のしあがる新人ボクサー・宇津井健の、挫折と栄光を描く。
 そのボクシング・シーンの熱闘、編集、カッティングの妙。素晴らしい。新人・石井輝男の第一回監督作だが、緊迫感あふれるボクシング・シーンの演出・編集の素晴らしさ。間然とすることはない、というのは、こういうことを言うのか。
 ふつう、邦画が俳優がボクシング・シーンを演じると、ある時代までは、かなりお間抜けな状況になりえたのだが、本作の宇津井健、主要なライヴァル・細川俊夫については、そういう齟齬が、見られない。
 素晴らしい。特に、細川俊夫、文科系へなへな男、卑劣漢、陰険陰謀ヤロウ、セクハラ色敵、の役が多いのだが、こういうスポーツマンタイプは、初めて、見た。いいんだよね。
 宇津井と、足が悪い小学生の妹の交流の描写も、成瀬巳喜男助監督の石井らしいところで。
 恋人役に池内淳子。若いのに、ちょっと、おばさん顔か。その、魚市場の食堂の給仕同僚に、大部屋扱いの新人・田原知佐子(原知佐子の本名)。かわいい。
 なお、同じ大部屋扱いの天知茂、またまた認識できず(笑)。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-21 00:48 | 旧作日本映画感想文

なんなんだ?(笑)

 本日、
>アクセス概要( 期間:00:00:00 ~ 19:56:13 )
>総PV数400 UU数259 平均PV数1.54 PV
と、いう、閑散ブログとしては、まったくの、異常値(笑)。
 で、検索ワードを、確認してみると、

No 検索ワード 数
1 兄とその妹 110
2 映画兄とその妹 7
3 映画 兄とその妹 6
4 橘雪子濡れ場 6
5 ぐれん隊純情派 3
6 DVDラベル 心中天網島 3
7 兄とその妹 映画 2
8 女優 ラブシーン 動画新藤恵美 2
9 島津保次郎 兄とその妹 2
10 昔の映画 2
11 兄とその妹 島津保次郎 2
12 緑の小筐 1
13 美しさと哀しみと 1
14 むかしのえいが 1
15 暗殺 篠田 1
16 大女優 ヌード画像 1
17 黒澤明 醜聞 1
18 悪の愉しさ 1
19 沙羅の花の峠 日本映画 1
20 スウェーデンポルノ

 なに、この「兄とその妹」祭りは?
不可解。関係者は、ぜひとも、、ご説明を(笑)。よろしく、お願いいたします。
◎追記◎結局、
◎昨日1/17アクセス概要( 期間:00:00:00 ~ 23:59:43 )
総PV数710 UU数505 平均PV数1.41 PV
◎本日1/18アクセス概要( 期間:00:00:00 ~ 20:35:30 )
総PV数569 UU数401 平均PV数1.42 PV

 この、当弱小ブログにおける、「兄とその妹」バブル(笑)は、検索元を逆探すると、どうやら、NHKBSで、この日の夜、山田洋次オススメの日本映画何たらという企画で、放映されたせいらしい。
 放映前に、見るべきかどうかの判断のためにか?、評判をリサーチで、それなりに検索され、放映後に、ドドッと検索、ということらしい。
 しかし、これまでさまざまな映画がBSで放映されていたはずなのに、なぜ、これだけ?
 山田洋次おすすめということで、普段戦前映画など見ない人が、見たのか。見たら、ほのぼの映画として、あまりに面白く、いろいろな評判を見たくなったのか。
 しかし、面白い映画は、いくつもある。なぜ「兄とその妹」が、爆発したのか。
 いや、ほかにも、検索が突然爆発する映画はあるのだが、たまたま、今までの爆発映画について、ぼくが書いていなかったために、ヒットしなかっただけなのか。
 よく、わかりましぇん。
 ちなみに、昨17日遅くの段階では、「兄とその妹」で検索すると、キネマ洋装店がまず上位にきて、その少しあとに当ブログ。ところが、本日では、キネマ洋装店と当ブログが、逆転(笑)。
 いやー、キネマ洋装店のほうが、面白い思うがなあ(笑)。 いや、謙遜で言うわけではなく、当ブログの、「兄とその妹」感想は、何回か見たうえで、これまで気づかなかった点を、改めて、書いてる(だけの)ところがあるわけで。
 かくもヒットさせた皆さんの、感想も、聞きたいなあ。
◎再追記◎キネマ洋装店の名誉?のために、追記すれば、当ブログが若干、上回っているのは、グーグルのみ(今は、逆転されているかも)。ヤフーでは、キネマ洋装店の、だいぶ下に当ブログが。つまり、検索サイトによって、得意不得意?があるというか、その検索を選ぶ人の違い?というか、よくわかりませんが。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-17 20:07 | 業務連絡 | Trackback | Comments(0)

TV「運命の人」雑談

 日曜9時のTBSドラマ「運命の人」を、帰宅後途中から見て、まあ、ドラマ自体の感想は、たわいのない凡庸なもので、特に云々することではないが、この時代のマスコミの立ち位置が、笑えたので。
 ドラマは、沖縄返還交渉の、舞台裏の密約を、毎日新聞・西山太吉が暴くストーリーを、人物名などは仮名にして、描いている。

 主演・本木雅弘らは、もはや、今では、なぜ、そうなんだ、としか言いようもない、バカタレどもだ。
 彼らは、<日米は対等でありたい>、と考えている。しかし、<日米は対等でありたい>ということと、<現実には、日米は対等でない>ということは、まったく別物である。<日米は対等でありたい>は理想であり、<現実には、日米は対等でない>は、文字通り、現実である。
 それを、意図的にか、先天的バカなのか、彼らは、徹底的に混同してやまない。
 <現実には、日米は対等でない>上に、なんと太っ腹なことに、絶対的優位者であるアメリカは、平和的に沖縄の領土を、日本に返還するという。
 当時、世界最強の金持ち国の余裕、二流国への施し、チャリティーという面も、あったろう。今のオバマのアメリカには、そんな余裕すら、ないのだが。
 もちろん、アメリカが、単に、太っ腹なだけではない。
 沖縄を領土として保持するほどの、必要性も魅力も、メリットも、特段にはない、アメリカとしては、基地さえあそこに残しておければ、「基地の付属物」である、沖縄本体なんか、要らない。
 さらに、沖縄返還を欲している日本という子分に、飴玉を与えて、冷戦時の日米関係をいっそう補強しよう、という思惑があったわけだ。
 しかし、戦争抜きの、平和裏の領土返還など、世界外交史上にも、ほとんどありえないだろう。そんななかで、領土が、優位国から、劣位国への「ギフト」として、返還される。
 そこに、多少の<お手盛り>、あるいは<お返し>が、あるのは、やむをえない現実である。
 アメリカが欲する限り、沖縄に大量の基地を残すこと。
 現実の返還費用に、多少とも、日本に<色をつけて>もらうこと。
 それが、残念ながら、現実である。
 しかし、そんな「現実」の結果、戦争抜きで領土が帰ってきたのだから、この「現実」込みで、この領土返還を「多とする」べきだったのだ。

 しかし、こういうバカタレども、理想を現実と混同するやからは、今も、あとをたたない。
 「25パーセント削減」が理想だから、と、早々公言するバカ。
 「最低でも県外」が理想だから、と、何の現実的裏づけがないまま、早々公言するバカ。
 「反原発」が理想だから、と、早々「脱原発」を公言するバカ。
 「消費税増税」が理想だから、と、デメリットを無視して、早々公言するバカ。

 理想を語るあまり、現実を見ない、バカタレどもは、現在でも、枚挙にいとまなし状態。
 民主党が、あの当時、政権党であったなら、「沖縄返還」という「離れ業」は、出来なかっただろう。むろん、最近の民主党は、一基地の「移動」すら、端緒にもつけないのが、現実だ。
 ここ数十年の自民党も、同様だが、それでも、長い時間をかけて、やっと「端緒には」ついたのだ。

 沖縄という土地柄か。どうも「理想」と「現実」の混同、あるいは、理想による現実無視。子供でもわかる地政学上の位置から、沖縄が、ほぼ永遠に、最前線である、という現実を。
 いや、むしろ、そういう過酷な現実があるからこそ、沖縄は、常に、「現実離れ」した「理想にまみれている」のかもしれない。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-17 10:55 | うわごと

富本壮吉「可愛いめんどりが歌った」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。61年、大映東京。
 主演・大空真弓の絶対の魅力。キュートでセクシー、大空真弓の、ゆいいつの代表作というべき。1月21日(土)まで、上映中。
 日本映画には、数は少ないながら大坂から来た姪が、奥さんに頭が上がらない伯父さんの家に舞い込んで、ひと騒動を起こす作品の系譜?がある。小津安二郎「淑女は何を忘れたか」、市川崑「あの手この手」、川島雄三「女であること」、それぞれ桑野通子、久我美子、久我美子が、おてんばな大坂の姪を演じた。
 本作の大空真弓もまた、その系譜に連なる、絶対の魅力を発揮。ぼくはこれほど素晴らしい大空真弓を、見たことがない。主演作自体が珍しいが、この女優の美質が全て出ている。
 ただし。本作の大空真弓は、正確には、菅原謙二・左幸子夫妻の、姪では、ない。妻・左幸子の親友の娘。
 だから、オドロクべきことに、(以下、ネタバレあり)






 キュートでセクシーな魅力に抗しきれず、菅原謙二と、とうとう、出来てしまう。以後、左幸子を欺いて、男と女の愛欲生活に。
 さすが、大人な大映、ほかの映画会社、東宝だとか松竹だとか日活だとかなら、まず、ほのぼのとした青春ホームドラマ・コメディーにするべき題材で、大人の愛欲を描いちゃう。他社が、とりあえず、お子さまからお年寄りまで楽しめる映画を目指すなか、とうてい家族連れで行きにくい映画、うぶなカップルには赤面の映画を作ってしまう。原作は、やはりか、藤原審爾。
 ふつうなら、他社なら、こんなに可愛い大空真弓だもの、アイドル映画にして、にこにこほのぼのコメディー映画にするだろう。なのに、こんな、サスペンシフルな、アダルトな、ドンヨリ愛欲映画に(笑)。大映、大人だなー(笑)。
 というわけで、菅原謙二(なかなか似合っている老け作り)と、うまく行っているときは、菅原とラブラブ、菅原とうまく行かなくなると、すかさず、田宮二郎に、瞳キラキラ。大空真弓は、そういう性悪女を怪演する。すばらしい。
 大映には、京マチ、若尾、ナカタマ(あ、中村玉緒のことね)、叶順子らの、ぷっくらセクシー女優の系譜があるが(あるのか。あるのだ)、大空真弓もその系譜のひとり、と見たが、上記女優ほど、重用されなかったのは、TVメインになっちゃったからなのか。

 大空真弓は、東京阿佐ヶ谷三丁目の、TV脚本家・菅原謙二宅に、大阪から家出して、身を寄せる。そこに出入りしている、川崎敬三プロデューサー、田宮二郎演出のTVドラマ「可愛いめんどりが歌った」のヒロイン役に抜擢され、その、ツンデレな魅力と、猫の目のようにくるくる変わる感情の波で、周囲を、翻弄していく。
 こういう、飛び道具みたいに感情のブレの激しい女、いるよなあ。可愛いような、迷惑なような、最終兵器オンナ。その、全て、魅力も欠点も、余すことなく描き出す、大空真弓の、素晴らしさは、言うことなし。
 ふつう、60~70年代の日本映画が、TV局とその出入りの人物を描くとき、たいていは、TVのレヴェルに合わせた映画作りをするのだが(それが、映画寄りのぼくからすると、まったくつまらない)、本作では、TVの表層的上滑りとは、乖離した、苦い味を、垣間見せて、異色で。
 ただし、田宮二郎は、軽薄なTVマンなのに、妙に純情で、田宮らしくない。それでも、その純情なはずの田宮にさえ、苦い選択をさせるのが、大映やなあ、大人ですやん。
 なお劇中TVの、同時に本映画の、主題歌を歌う森山加代子も、かわいい。今とは、まったく別人の可愛らしさ。あまりに違いすぎて、びっくり。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-17 01:25 | 旧作日本映画感想文

斎藤寅次郎「アジャパー天国」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.3 新東宝篇-映画保存のための特別事業費による」特集。53年、新東宝。本特集で、あと1回上映。
 戦前から、ジミーな脇役コメディアンとして、キャリアも長い伴淳三郎が、「アジャパー」なるフレーズで、突然ブレイク。主演映画が作られるが、クレジットのビリングは二番目、一番目はアチャコ。つまり、それだけ、キャリアは長いが、主役人気はなかった証拠で。 
 まあ、それも無理はなく、おっさん顔の伴淳が、ブレイクっつても。ま、まったく面白くないし。
 貧乏アパートに住む住人たち。大学生役というのが、まず爆笑の田端義夫。うすい、穴だらけの壁を通して、隣室の子供が水鉄砲。それを雨漏りと勘違いした、田端が、次々、寝床を変える。それでも水鉄砲攻撃、どんどん寝床を後退していく。この馬鹿馬鹿しさが、いい。
 もっとも、このシーンでも、全体でも、発想はいいのだが、いかんせん、コメディ・センスが、ドンくさい。斎藤寅次郎、喜劇専門監督として、見られているが、さして面白くない。
 しかし、それでも、田端義夫の、ドンくさくも、なかなかのコメディ・センスで、たのしい。
 そして、<卑怯なコメディアン>花菱アチャコ。かのモンティパイソン、ジョン・クリーズのシリー・ウォークの元祖、手のひら、ひらひらのバカ歩きに、卑怯な、と思っても、思わずニコニコ。
 60年前の人気コメディアン、多数登場。しかし、それで、今でも笑えるコメディアンは、というと。
 はなはだ、数が少ない、貴重さ。
 えっ、バタやん、歌手だよ、コメディアンじゃないよ。そこんとこ、よろしく。おっす。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-15 23:41 | 旧作日本映画感想文

悪代官と越後屋

 ドジョウの野ダメが、岡田克也を副総理に。
 絵柄がどうも、ふたりが密談している感じが、
陰気な顔の悪代官・岡田VSこすっからい顔の悪徳商人・野ダメ
 に、見えてしまう(笑)。
 もともとは商人の息子の岡田は、そのフランケン顔で、毎日ニュースに顔を出すだけで、景気が下がる、ザ・官僚フェイス。
 野ダメは、あのつるっとした役者顔(昔風の、しかもドサ回り風の、ね)の、ぽてぽて感が、スキあらば、庶民の生き血を吸おうという、悪徳商人顔で。
 これに<悪の組織>日教組の、輿石の紛れもない悪人顔。
 悪代官の顔と、悪徳商人の顔を、同時に併せ持つ、奇跡の男小沢一郎を加えると、なにやら、民主党は、魑魅魍魎の世界だな。
 そして、安住だの、松原だの、中堅下っ端は、ボンボン顔というか、こども顔。ざこ顔か。

 鳩山政権や、菅政権は、いい意味でも悪い意味でも(もちろん、いい意味は、ほとんどゼロだが)、総理があまりにキャラ立ち、ツブ立っていたため、ほかの閣僚の印象は、薄い。
 ところが野ダメ政権は、総理があまり表に出ない?ため、ほかの閣僚のダメ加減も、印象の前に出てしまう。相対的にダメな、政権で、あると。
 毎度毎度の<昔の名前ででています>の岡田のたらいまわしだけでなく、ビビル松原、<田中真紀子の番頭>まで、入閣する始末。
 こりゃあ、仮に(笑)民主党第4代目内閣が出来たとしても、閣僚の人材、いないんじゃないか。今でも、いないけど、さらに。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-15 09:16 | うわごと

田中徳三「脂のしたたり」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。66年、大映東京。
 クールな田宮二郎が、証券会社の調査部員を演じる<経済メロドラマ>。原作はさもありなん黒岩重吾。
 小規模で地味な農業機械製造会社が、突如、株買占めの対象になる。謎の女・冨士真奈美、謎の男・成田三樹夫が、さして利益もなさそうな会社の株買占めに動く。そのからくりは。
 なのではあるのだが、ふんいきはありつつ、田宮の魅力も活かしきれていない、いささか、つまらないお話。凡作で。
 というのも、結局本作は、冨士真奈美の復讐譚がメインで、田宮は、遅ればせながら、駆けつけて、事件の結末を見守るような役。
 お話も、この農作機械会社が、戦前は軍需工場で、乗っ取ったのち、そのノウハウを生かした、武器製造・輸出をしようという、三国人(毎度おなじみ金子信雄)の計画であった、という、まあ、あんまり、面白くない話で。そこに冨士真奈美の復讐がからみ、田宮は、いささかピエロ扱い。
 冨士真奈美の、美貌も、あまり、生かされていない。もったいない。このひとも、映画では、あまり報われなかった女優さんで。
 田宮の元カノ、いまは金で鈴木瑞穂に買われた形の、久保菜穂子、という三角関係も、イマイチ、はじけず。
 脂、したたらず。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-14 23:46 | 旧作日本映画感想文

本多猪四郎「若い樹」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。56年、東宝。
 ほのぼのとした、クラシカルな青春映画。1月14日(土)まで、上映中。
 熊本から東京の女学校に転向してくる女子高生・青山京子。卓球部に入り、いきなり有力選手になるのだが、コーチの大学生・山田真二との仲を疑われる。
 山田へのラブレターが、洗面所に落ちていて、それを青山が書いたと、疑われ、卓球部員たちに糾弾される。高校生がラブレターを書くこと自体が、すでに<悪徳>なのだ、という、今から見たら、まったく信じられない<道徳感>。それが<人民裁判>のごとき、ヒステリックな、つるし上げ糾弾の対象、となる。
 いま現在から見れば、信じられない奇観だが、なに、ラブレターを、日の丸君が代に置き換えれば、いまも日教組教師は<人民裁判>の対象にしている(苦笑)。
 しかし、本多監督、原作・小糸のぶ(「平凡」とか「明星」とかに掲載)の、清く正しく美しい学園モノ、青山京子やら山田真二やらが出てきて、父親が志村喬で、というのは、何本か?見た記憶もある。
 今は亡き三軒茶屋・アムス西武の、スタジオアムスでの、本多猪四郎特集(怪獣映画をのぞく、という、いかにもアムスらしい企画)で、絶対見たに違いない、でも記憶がないというところで、見たのだが、奇跡的に(笑)初見でありました。

 調べてみたら、本作は「ゴジラ」翌年の作、怪獣映画ではバリバリの東宝A級監督であった本多は、実は怪獣映画以外では、つつましやかなB級文芸/青春映画の、ジミ監督なので。
 好ましい、つつましやかな映画ばかり。しかし、あまりにつつましやか過ぎて、たかが、ラブレター一枚が、学園大騒動の元になるなんて。うーん。
 しかし、青山京子はじめ、結構本気で卓球やっていて、そういう意味では、好ましい青春映画の小品。古典的な、お行儀のよい青春映画、それはそれで好ましいものがある。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-14 00:19 | 旧作日本映画感想文

宇野重吉「硫黄島」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。59年、日活。
 意外にも、というのは失礼か、ホントに意外にも、面白く、重厚な、刺激に満ち満ちたサスペンス快作。1月14日(土)まで、きれいな16ミリ版にて上映中。
 新聞記者・小高雄二が、激戦の硫黄島戦で生き残った男・大坂志郎の軌跡を取材していくうちに、浮かび上がる、その生き様。
 菊村到原作は、芥川賞受賞作とか。その原作(未読)を、おそらく最大限に生かしきった。すばらしい。
 世間では、同じ日活の山村總「黒い潮」のほうが社会派・新聞記者モノとして、評価が高いが、どっこい、こっちの宇野重吉映画のほうが、映画として、すばらしいと、見た。ほかにも、宇野重吉監督作は見たが(題名失念)、それはイマイチだったが、これは素晴らしい。美術・木村威夫、助監督・武田一成。
 硫黄島戦映画は、単なる偶然か、宇野、イーストウッドと、俳優出身監督が、快作を作る。イーストウッドどうよう、監督の出演はないのか、と思っていたら、最後の最後に、宇野が同僚新聞記者として、こらえきれず?に顔を出す。これが、ゆいいつのキズか。
 なお、小高が取材を進めるなか、大坂の下宿を訪ねる、親しく家族ぐるみで交際していた、渡辺美佐子、その夫に鈴木瑞穂、その独特のいい声、ただし後姿のみで顔は見せない、しかし頭のはげ具合と声で鈴木瑞穂と一目瞭然(ちゃんとクレジットもされている)、ところが一瞬席を外して、戻ってきた際、全然別人の知らない顔。衣装とはげ具合は同じだが(笑)。
 ひとつのシークエンスを、少し時間を空けて撮影したゆえに、後半の大部分を、何らかの理由で、鈴木瑞穂が参加できないまま、代役で撮影したのか。これも、大坂志郎の人物像を同定できない小高、という映画のテーマと合わせた、アイデンティテイ不在への暗喩か(バカ)。
 暗い色調のなか、芦川いづみが、花を添える。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-13 00:10 | 傑作・快作の森

清水宏「もぐら横丁」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.3 新東宝篇-映画保存のための特別事業費による」特集。53年、新東宝。本特集で、あと2回上映。
 尾崎一雄の同タイトル私小説などを、マジメな(たぶん)吉村公三郎と清水宏が脚本化、だから清水宏「の花の咲く下で」みたいに、いい加減に温泉に行くこともない(笑)まっとうな(笑)、ほのぼの映画に(笑)。
 まだまだ売れていないという意味での新進小説家・佐野周二と、その妻・島崎雪子の、下落合は通称もぐら横丁での、貧乏夫婦物語。
 ぼうようとした佐野周二と、キュートな島崎雪子、その魅力。千葉泰樹「夜の緋牡丹」ほど、かっとんでない島崎は、そのナチュラルな美質を発揮。この時代の女優さんには珍しく、いつも口角を上に上げて、ほほえむ。現代のアイドルとしても通用しそう。そんな島崎が、戦前からの佐野周二の妻とは、ちとかわいそう。しかしダンナの貧乏を、ニコニコ、明るく無邪気に支える妻の役にはぴったり。
 住んでいた下宿の所有権を、何ヶ月分か家賃をためても強く攻めない宇野重吉から、いかにもドライな田中春夫に譲渡され、行き場を失う。おりしも、妻が妊娠したので、妻を入院させ、その付き添いということで、産前二ヶ月、産後半年も病院に住み込む。って、この方が、部屋を借りるよりよっぽど高くつくのでは(笑)。そういう、とほほな貧乏物語を、ほのぼのと描く。
 作家志望の大学生(壇一雄がモデルとか)、人気作家(林芙美子がモデルとか)、また、同輩作家と思しい、増田順二とその妻・若山セツ子、千秋実らが、サポートする。
 ここら辺の人間関係は、当時の私小説全盛の頃なら、容易にモデルは察しられるのだろうが、あいにく私小説なるものが壊滅した現在では、誰が誰やら。ま、そんなウチワの詮索は、どうでもいい。
 いささかのこっけい感を伴いつつ<貧なる聖者>であった、私小説家、という、今では、まったく失われた幻想の映画だ。もちろん、清水宏らしい、たいへんなユーモアがいっぱいの映画。
 ラスト、芥川賞を受賞した佐野周二が、その受賞記念の副賞の懐中時計を、早速質屋に預けに行く。その質屋の若主人が、磯野秋雄、もちろん清水や佐野とともに、戦前松竹メロを担った、好青年役者、泣かせるー。
 goo映画によれば、大家・モリシゲ、春光館主人・笠智衆は、やはり予定キャスティングで、実際は違う。大家は清水映画毎度の日守新一、主人は宇野重吉、そして口先八丁のいんちき・アドライター(宣伝マン)にモリシゲ。笠~宇野への変更はともかく、口先ぺらぺら男へ、絶品モリシゲをシフトしたために、空いた大家に、おなじみのヒモリンをあてがったというところだろう。
 林芙美子の日本家屋を、急速横移動するキャメラに、いつものことながら惚れ惚れ。
 天知茂がクレジットされているが、気がつかなかった。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-12 10:04 | 旧作日本映画感想文

千葉泰樹「夜の緋牡丹」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.3 新東宝篇-映画保存のための特別事業費による」特集。50年、新東宝=銀座ぷろだくしょん。本特集で、あと2回上映。
 ホントにキュートな島崎雪子は、ダンス芸者。お座敷に、ポータブル・レコードプレイヤーを持ち込み、うすい(当時としては、精一杯の)ビキニスタイルで、ダンスを見せる。もちろん和装で、本来の芸者としても、酒席にはべる。
 この島崎雪子が、ニコサン(一日230円の低給で土木作業)伊豆肇と、だんだん仲が良くなる。ニコヨンというのは聞いたことがあるが、ニコサンは初めてだ。ギャグか、当時、実際にあったのか。
 いまは、あえて、というか、低給の土木作業員だが、実はインテリの伊豆肇と、マンガばっかり読んでいる、漢字もあまり読めない島崎雪子の、格差カップルが、だんだん仲が良くなるところが、ラブコメの王道で、面白い。
 インテリの伊豆が、島崎の漢字能力向上のため、マンガを禁止、活字の本を読ませる、というのが、すでに、おかしい、のだが、その活字の本が「少女の友」という雑誌なのが、ダブルでおかしい。おそらく当時のこととて、まぢめな選択なのだろうが、今からしたら、ギャグにしか見えない。
 いっぽう、妻子もちの北澤彪と、不倫トラブルの、月丘夢路のエピソードが、並行的に描かれる。島崎の同僚芸者の、うすいお馴染みが、北澤彪で、その執着の不倫愛人が月丘。かすかなつながりはありつつ、しかし並行して語られる二組のカップルの共通項は。なかなか見出せない。
 そのうち、月丘と伊豆は、ともにアマチュアの作家であるという描写があり、うむ、これか、やがて、ふたりは、文芸春秋新社の文学新人賞を、同時に受賞するという接点が、後半になって、初めて、出てくる。
 なかなか、オシャレな物語運びなのだが(接点のない二組の登場人物たちが、やがて鮮やかに交差する)これをあまり生かしたとは思えない、千葉演出。
 授賞式(といっても当時は、かなり簡素なもの)当夜に、伊豆は、なじみの居酒屋に月丘を連れて行き、なんと、初対面の新人作家カップルは、その夜のうちにデキてしまう。妻・島崎雪子のことなどまるきり眼中にない伊豆肇は、月丘に、のめりこむ。
 かくて、二つの並行して語られたエピソードは、交差するのだが、今の目から見ると、この交差エピソードの演出の、凡庸さのみが目に付く。そういう映画が多くなり、目が肥えてしまったせいで、先駆者の映画が、逆に先駆であるがゆえに物足りなく見えてしまう。のちの世のすれっからし鑑賞者から見ての、先駆者ゆえの不利。
 しかし、なんとしたことか。のちの世の鑑賞者である、ぼくからすれば、かの鈴木清順の傑作「河内カルメン」は、ほとんどどこの映画の精神的リメイクかと、思わせる。
 狭い二階の下宿で、島崎雪子が電気を消し、暗転。伊豆肇が灯りをつけると、逆さにぶら下がった島崎雪子! 伊豆が島崎に迫るときの、鏡台の鏡のスィング。狭い部屋でのラブシーンの飛翔ぶり。徹底していない鈴木清順、という感じ。センスが、似ているのだろうか。
 このあとに見た清水宏「の花咲く下で」でも、妻子ある北澤彪の不倫が原因で話が転がっていく。北澤彪、新東宝の不倫王か。
 島崎雪子が若さの可愛らしさなら、月丘夢路は、熟れかかった女の美しさ。ちなみに本作の助監督は、井上梅次で、のちに月丘と結婚、コンビ作も多い。

 goo映画も、日本映画情報システムでも、本作に志村喬出演ということだが、これはおそらくキネマ旬報の、ないしは当時のプレスシートを鵜呑みにした予定らしくて、出演していない。代わりに出演と思われるのが、伊豆のパトロン格の居酒屋オヤジ・山本禮三郎。
 黒沢明「酔いどれ医者」(◎追記◎もちろん「酔いどれ天使」の間違い)で志村とも共演、ヤクザの兄貴分の山本が、あの目玉ぎょろりのまま、居酒屋のオヤジに。こんな、ぎょろり、ぎょろりのオヤジの居酒屋なんて、気が休まりませんぜ(笑)。
 島崎雪子の美質が、光る映画。島崎ははるか後年に、これも助監督の神代辰巳と結婚・離婚。クマシロ演出の島崎も、激しく見てみたかった。きっと、監督と女優としても、相性抜群ではないかと、惜しまれる。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-11 07:37 | 旧作日本映画感想文

清水宏「桃の花の咲く下で」

 京橋にて。「よみがえる日本映画vol.3 新東宝篇-映画保存のための特別事業費による」特集。51年、新東宝。本特集で、あと2回上映。
 清水宏、アホや(笑)。ほんま、アホや(笑)。
 笠置シズ子主演の、歌う紙芝居屋の話なのに、後半、なぜか、いきなり、関係者が、温泉に、長期湯治(笑)。いつもの、毎度おなじみ、清水宏温泉映画に、なってしまう(笑)。
 必然性のないヌード、という言葉があるが、これは、さすがに、必然性のない温泉だろ(笑)。
 ま、でも、清水宏映画で、温泉が出てくると、うれしくなっちまうのは、清水宏ファンの、悲しいサガだな(笑)。
 話はこうだ。酒場女・笠置シズ子は、なじみの客・北澤彪の、子を身ごもる。生まれた子を自力で育てられない、いや、こんなヤクザな女に育てられたら、息子も苦労しよう、という判断、子供のない北澤彪・花井蘭子の夫婦に預ける。子供は、笠置を「おかあさん」、花井蘭子を「ママさん」と呼ぶ。
 そして、自分は、酒場づとめに嫌気がさし、紙芝居屋になる。夜の酒場で、男相手の酒席より、おてんとさまのしたで、子供たちの相手をしたいと。で、紙芝居屋に。
 お得意の歌を歌って、子供たちに大人気。ここらへんの唄う笠置シズ子のおおらかな、すばらしさ。

 で、この子供に人気の新人紙芝居屋に嫉妬しまくる先輩たちに、大山健二、日守新一、という、うれしさ。清水宏映画はもとより、戦前松竹おなじみの、コミカル・バイプレイヤー。
 特に日守新一は、「あたしはもともと、あんまだったんですがね」というのに、ニヤニヤ。ヒモリンはもちろん、清水宏「按摩と女」の主演で、あんまを演じている。
「そのあんまも、最近では、女あんまなんてものが出てきて、それで、上京して、商売替えで、紙芝居屋になったら、今度は、女紙芝居屋が出てきて、またまた食われちまうんですからねえ」と、愚痴るのがおかしい。愚痴るヒモリンは最高に味がある。

 で、笠置シズ子の子供が交通事故、足の怪我、病院を退院して、さて、山あいの温泉に滞在して、足を直そうという。北澤彪・花井蘭子夫婦は、東京に用事があるので、ここはひとつ、笠置に付き添ってもらえないか、と。笠置は、息子と一緒に過ごせるので、大喜び。
 というわけで、映画は、後半、清水宏いつもの温泉映画に、突入(笑)。
 フィルムセンターのチラシによれば、<公開当時、映画批評家の双葉十三郎は「戦後の彼の作品としては一番つまらぬ粗品」>と酷評したというが、それも理解できる。笠置・北澤・花井の、大人三人の人間関係がご都合主義。特に花井は、自分の夫の不倫の子と、その不倫相手に、何の人間的動揺も見せない。
 さらに、息子も、笠置を「おかあさん」、花井を「ママさん」と、両方とも慕い、何の子供的混乱も見せない。
 だから、もちろん<母モノ>としての、感動もなく、後半は、無理やり、必然性のない温泉モノに(笑)。
 清水宏は、母もの映画のセオリー、ヒューマン・ドラマのドラマツルギーをことごとく無視して、ただただひたすら、温泉へ温泉へ(笑)と向かう。 
 で、その温泉というのが、どう見ても清水宏「簪」「按摩と女」の温泉とそっくりな池があり、そっくりな、粗末な橋が渡してある。そこで、「簪」の笠智衆どうよう、子供が足を直すべく、リハビリの散歩に励むのである。
 脚本は、清水とその盟友・岸松雄だから、ここら辺の阿吽の呼吸は、明らかに確信犯。あるいは、過去作品流用のやっつけ仕事。
 宿屋には孫と滞在している岡村文子、これまた戦前松竹以来おなじみの・…おっと、違った、岡村文子にそっくりな清川玉枝というのが玉に瑕か。いや、清川玉枝もいいんだけれど、戦前からの東宝系だしね。
 もう、こうなったら、宿屋の主人に、何で、坂本武を出さないんだと(笑)。
 というのも、笠置がびっくり、どこかで聞いた声がする。なんと、日守新一があんまに出戻っていたので。ヒモリンもびっくり、息子の足をさする笠置シズ子を見て、「女紙芝居屋から、今度は、女あんまになって、またまた、あたしの職を奪うのか」と、ガクガクぶるぶるに、大笑い。
 清川玉枝の肩をもみつつ、子供にせがまれて、笠置の歌をヒモリンが歌う。
 世にモリシゲ節というのがあって、余人にはまねの出来ないその独特の節回しに、味があるのだが、それ以上に味が有り過ぎなのが、ヒモリン節。その超絶濃厚な、ヒモリン訛りの、唄いっぷりが、本作の白眉か(笑)。
 これは、もはや、ドラマではない。快唱笠置シズ子の歌と、絶品ヒモリン節を温泉場の余興として楽しむ、清水宏ヴァラエティー・ショーだ。もちろん、たいへん楽しい。
●追記●笠置は息子に見栄を張って、紙芝居屋を、幼稚園の先生だ、と嘘をつく。そのわりには、息子の入院先の下の空き地で、紙芝居。息子にばれないように、目の周りをマスクで、隠す。このアイ・マスクが、怪しげ。まるで、酒場時代に怪しげな仮装パーティーに使ったものを流用したような。一瞬のエロが、ほのかに漂う。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-10 03:58 | 旧作日本映画感想文

島耕二「女めくら物語」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。65年、大映東京。
 若尾文子独特の、つややかなあでやかさが楽しめる、女性メロドラマの佳作。1月10日まで上映中。
 つややかも、あでやかも、漢字にすると同じ「艶やか」「艶やか」。これこそ、若尾文子。映画全体が、若尾にスポットを当てて、若尾に奉仕しているかのような。そういう大映プログラム・ピクチャア。
 ヒロインは、十六の年に、にわかめくらとなる。修行して、あんまとなり、中村鴈治郎・倉田マユミ夫婦経営の熊田マッサージ院に、住み込み。このマッサージ院が、花柳街に近いもので、料亭の酔客が中心になる。ということで、美しいあんまである若尾はセクハラの嵐に。

 そういう中で、一服の清涼剤とも言える、青年実業家・宇津井健と、運命の出会い。この宇津井が、いかにもさわやか若社長。若尾はたちまち一目ぼれ、いや、目が見えないので、一目ぼれとは、違うか。と、ベタなボケでした。
 結局一年くらいのあいだに、たった三回しか出会えない、若尾は、一回目で恋に落ち、二回目で、一緒に死ねるなら本望といい、三回目で、自分の全財産30万円を、男にあげて、これで再起を図って欲しいという。一途に、わき目もふらずに、男を恋い慕う、おんな。いや、わき目も、ないか。
 ところが、この、宇津井健が(笑)。チョー好青年社長。さわやか。明朗。やさしい。
 ところが。自分のほうから「電話するよ」「6時に迎えに行くよ」といいながら、そのつど何ヶ月もなしのつぶて。確信を持って自分から、若尾に約束するのに。
 誠実でさわやかな男が、つぶらな瞳で、自分からした約束を、決定的に、果たさない。しかも、何度も。
 それをいじらしく、待つおんな。
 まあ、古典的っちゃ、古典的だが、まず、ケータイなどが発達した現代ではありえない、すれ違いメロであり、いや、ケータイがない時代でも、たとえば戦争とか、そういう巨大な<言い訳>でないと、通用しないメロドラマだろう。
 いささか時代後れな、バカ・メロドラマ(と、いってもいいレヴェル)。まあ、原作が舟橋聖一だからねー。
 だが、盲目であるがゆえの(文字通り)引け目から、全てにおいて、積極的に宇津井に迫れない、若尾のいじらしさ。そして、いうまでもない、若尾の美しさ艶やかさ、この二つが、かろうじて、このメロドラマが、バカバカしさに落ちいるのを、すくっている。
 そう、若尾は、宇津井に、一目会いたい、恋焦がれる。しかし、盲目であるがゆえに、その「一目」を、最初から、決定的に、封じられているのだ。おそらく堅実な演出の島耕二ではなく、この時期の大映なら、せめて三隅なら、この<反時代的なメロドラマ>を、全うしえただろうに。
 そして、若尾文子の素晴らしさとともに、宇津井健の絶対的スタア演技を賞賛したい。誠実な青年の、かなり不誠実な行為を、イヤミにならず演じられるのは、むしろ彼が不誠実な行為をすればするほど、その美質が光り輝く。
 この当時がおそらく最後だろう、今ではもちろん反時代的な、小林信彦言うところの<無意識過剰>ゆえのスタアの輝き。

 盲目(実際にも、恋にも)の若尾に対比されるように表れるのが、渚まゆみ。目明きなのに、あんまとなり、その若さと美貌を生かして、やりたい放題。人の金は平気で盗むわ、色目を使って、中村鴈治郎から、金をせびり取るわ。この渚まゆみのあばずれぶりが、超キュート。これじゃ、男はみんな、カノジョの言いなりだわ。奥さんが倉田マユミなら、このキュートな渚まゆみに、くら替えする鴈治郎、無理はないなあ、許す。
 この映画の鴈治郎が、ぼくが見た中では、やや衰えた顔で、ちょっとショック。衰えたゆえか、演出がアレだからか、この喜劇的人物から、喜劇性を一切剥奪したのは、鴈治郎ファンとして、解せない。

 これ以外にも、特記すべきなのが、大映美術。白黒映画では、絶対の堅実な美を示す大映美術陣が、カラーで、町全体を再現するとなると、店みせ、路地、坂道の階段など、何かしら、はなやいだ感じになるのが、面白い。こういう町の細部、全部を、大セットに再現するのは、まるで巨大なプラモデルを作るようで、楽しいだろう。そういう華やかさが伝わってくるかのよう。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-08 09:24 | 旧作日本映画感想文

藤原杉雄「ただいま零匹」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。57年、まどかグループ。
 独立プロの作品のようだが、主演の佐野周二を始め、岡田茉莉子(この頃はまだ東宝か)坂本武、1シーンのみの特別出演の佐田啓二、と松竹がらみの出演者から見ると、配給は松竹か。
 原作火野葦平らしく、舞台は九州・大分。大分オールロケか。
 財政難に悩む大分市長(佐野)は、市内高崎山の猿たちに注目。これを山のふもとの寺の庭先まで、おびき寄せて、観光資源にならないか。支出ただの、野生ざるで、市の財政の優良化をもくろむ。
 市議・市民がバカにする中、山に向かって、雄たけびを上げ、猿を呼び寄せる市長。
 有名な<高崎山の猿>誕生秘話(笑)なのか。
 これに徹すれば、それなりに面白い話なのかもしれないが、それではもたないと思ったのか、ヴァラエティを持たせたいゆえか、悪徳市議・上田吉二郎に頼まれた岡田茉莉子が市長を誘惑する話や、佐野の娘が駆け落ちする話も混ぜ、あまり面白くない話が、のんびり語られる、凡作に。
 特にどうという映画ではなく。

蛇足その1 本作は16ミリ上映。故障した、音声用ランプを新調したせいか、下手な35ミリ映画の音声より、高音質な音で。こんなにいい音の16ミリは、初めて、聞きました(笑)。

蛇足その2 前にも阿佐ヶ谷で一度見た<珍獣>?が、またもや出没。最前列に座り、メモを取るときは、ガバッと面を伏せ、そして、首を極端に前のめりに画面に突き出して映画を見る、そしてまた、激しく面を伏せメモ、またガバッと、前のめりに画面を見る。
 この連続の激しい動作が、ちいさな阿佐ヶ谷の館内では、目障りで目障りで。しかも傍若無人もきわまれり、メモをめくる音の激しいこと。
 とうとう、その隣に座っていた観客が、たまりかねて、席を途中で変えたほど。人に迷惑なのに、一向に気付かないクビひょこひょこメモ男
 じつは、「ただいま零匹」のあとの回、川崎徹広「豚と金魚」を続けて見たのだが、お、この回は、あいつがいないな、と安心していたら、なんと、あとから入ってきやがった。しかも、こいつ、ぼくと通路を挟んだ右に、座りやがった。
 しかし、ぼくとスクリーンと、クビひょこひょこメモ男の位置関係は、ぼくのほうがスクリーンに近い。
 右のこめかみに片手を添えると、クビひょこひょこメモ男は、何とか片手で、隠し通せた。あまりいらいらせず「豚と金魚」を見られた。ほっ。
 もし、このクビひょこひょこメモ男に遭遇したら、自分とスクリーンのあいだに、このクビひょこひょこメモ男を、置いては、いけないのだ。
 なお、こいつのメモ魔ぶりは付け焼刃らしく、映画後半には、メモの頻度は減り、映画に没頭。「豚と金魚」の際は、ギャグに、あはは、あはは、と声を出して無邪気に笑うのは、なんとなく憎めない(苦笑)。
 なお、お前、映画見るより、こいつばかり見てたのか、とお笑いの方がいるやも知れぬが、何せ、狭い阿佐ヶ谷の館内、こいつのクビひょこひょこは、スクリーンを見ている以上、いやでも、視界に入ってくるのだ。
 この日は、猿と豚と金魚と、珍獣の日であった。

蛇足その3 この映画の大分市議会では、各市議は、名前でなく、番号で呼ばれていた。市議が「議長」と、発言を求めると、議長は「はい、5番」という風に、発言を許可。佐野市長が発言を希望すると、議長は「特別1番」だか「番外1番」と、呼ぶ(ぼくはメモを取らないので、もはや記憶の彼方)。市長すら名前で呼ばれない徹底ぶり。これは、たぶん、ロシアあたりの地方議会の習慣か。それを左翼かぶれの地方議会が、妄信していたのだろうか。ふしぎ。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-06 08:25 | 旧作日本映画感想文

家城巳代治「ともしび」

 京橋にて。「映画女優 香川京子」特集。54年、キヌタプロ。
 冒頭に、北星映画株式会社配給、と、出る。出たぁ、北星映画(笑)。
 山本薩夫「真空地帯」でも、冒頭に北星映画クレジットあり。この「真空地帯」は、旧日本軍の悪弊を暴く映画だが、反戦映画には、あらず。何しろ、冒頭クレジットには、ソ連軍将軍と思しき軍人の銅像がエンエン流れ、日本軍の軍人さんはまったくダメだけど、ソ連軍の軍人さんは、渇望し、仰ぎ見るという立場。 ソ連軍さん、早く早く日本に侵略してくださいませませ、というのが、当時の左翼の願望、というのが、丸わかり。この映画を反戦映画と僭称するのは、まさしく左翼の巧緻。
 時代は流れて、民主党、社民党はじめ、現代の左翼諸君は、人民解放軍さん、早く早く日本に侵略してくださいませませ、という願望をいだいている模様か。

 貧しい農村の、貧しい小学校が舞台。映画冒頭に、全校朝礼。生徒が居並ぶなか、加藤嘉校長が、前校長にして、現存長、通称、村長先生・花沢徳衛の、銅像序幕式の弁。
 ここで、ぼく的には、大爆笑。
 校庭のポールにへんぽんとはためく、日の丸の旗。なんと、その日の丸は、中央横で、つぎはぎされている旗なのだ。つまり二枚の日の丸を、上下で半分にし、つぎはぎに縫合しているのだ。
 いくら貧乏な村の貧乏な小学校とて、わざわざ二枚の国旗を買って、それをつぎはぎするには、及ぶまい。いや、金がなくて、ぼろぼろの国旗をつぎはぎしました、なんて、いいわけは通らないほど、このつぎはぎ国旗は、真っ白できれいな新品だろう。
 思い起こせば、つい最近も、二枚の日の丸を、やはり中央横で、つぎはぎして、民主党党旗を作ったのは、記憶に新しいところ。
 明らかに旧弊な保守派と揶揄されている、村長先生の銅像を建立する、その何百分の一かで、買えるだろう国旗を、つぎはぎのまま、というのは、もう、日の丸に対する悪意(笑)以外の何物でもないのは、明らか。
 さすが、北星映画配給、後援・日本教職員組合の、左翼映画だけのことはある(笑)。

 しかし、そういう、バカ映画が、つまらないかというと、そうでないところが、映画の面白いところ。
 特に、子供たちの描写が出色。一人ふたりではない、クラスの全員ともいうべき、子供たちがすばらしい。なんという、自然な演技。
 よく、清水宏映画は子供の演技がいい、といわれているが、実は、学園モノなどの子供演技が、果たして、世間や映画史が言うように、うまいのか、常々、疑問に思ってきた。そういや、小津も、子供の演技をほめられることが多いが、ありゃ、明らかに<ヘタウマ>だろ。
 ところが、本作の子供演技、しかも多人数、明らかに、違う。家城演出のうまさが、光る。
 「ちょんまげぷりん」で注目していた、鈴木福君、そして芦田愛菜ちゃんのうまさは、確かに文句なしだが、そしてそれとはもちろん、傾向が違うが、集団の子供たちの演技の素晴らしさでは、ぼくは、本作以上に、うまい映画を見たことがない、と思う。下手な子が、一人もいないのだ。

 日教組教師・内藤武敏は、誠実で、熱血で、授業熱心な好青年だ。放課後も、夜遅くまで、家の手伝いで学校に来られなかった生徒の家に行き、教えている。おかげで、受け持ったクラスは、学年一の好成績になった。
 だから、生徒の人気も絶大である。
 周囲の日教組ならぬ教師たちは、この人気に嫉妬して、影で、あいつはアカだ、とののしる。
 自分のうっぷん、もやもやから、生徒に当たりちらす教師、戦争中は陸軍伍長で、とにかく反動的、生徒に暴力を振るう教師。これら、非・日教組教師は、生徒に不人気で、「学校に行くのが、いやになる」と、子供たちの悩みのタネ。
 わかりやすい。わかりやすすぎる(笑)。

 繰り返すが、そういうバカ映画なのに、映画は、すばらしい(笑)。
 小心者で生徒に当り散らす、小者教師に増田順二。絶品。加藤嘉校長、村長先生・花沢徳衛ら、本人自身は、バリバリの左翼演劇人が、保守反動の、小権力者を、いかにも、気持ち良さそうに演じていて、ほほえましいのは、この種の映画のお約束で。
●追記●そうそう、香川京子特集なのに、香川京子のの字もなかった(笑)。子供たちのひとりの姉の役。美人女優が、農村の貧しい女性にチャレンジしてみました、しかも、あんなに健康そうなのに、胸をやられている病人役、という程度の。
 クレジット一番手(つまり主演扱い)だが、出番は脇役程度。しかし、きりっとした美貌は相変わらず。
 独立プロの<有意義な映画>にチャレンジしたい女優、むさい新劇系ジミ俳優に、メジャー映画のヒロイン女優で、文字通り花を添えたい、興行価値を添えたい独立プロ、二者の思惑の野合で。
●再追記●すいません、ちょいと、嘘、つきました。ないしは、オーヴァーに書きました(笑)。

>なんと、その日の丸は、中央横で、つぎはぎされている旗なのだ。

 なんと、は、嘘、ないし、オーヴァーですね。 現実に、中央で縫い合わされた、巨大日の丸は、過去にありました。今も、あるのかは、わからない。
 つまり日の丸は、上下左右対称と「見る」ことも、できるので、同じ白地に半円を、上下でつなぎ合わせると、ちゃんと白地に円、の日の丸になる。半分の布を、縫い合わせると、安価な日の丸が、できる。
 日の丸は、実際には、確か、左右で円の位置が微妙に違うので、左右対称にならないかのように、記憶している。しかし、村長先生の銅像を建立する金が集まるのなら、まずは、プレーンな日の丸を作れ、って、話だよね。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2012-01-04 05:06 | 旧作日本映画感想文

田中重雄「夜の配当」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。63年、大映東京。
 田宮二郎のクールな男前ぶり、さっそうとした一匹狼ぶり、そのかっこよさを前面に押し出した、ピカレスク・ロマン。
 この映画を見るもの全員が、田宮二郎に、ああ、ほれぼれ。
 というのは、田宮二郎出演の大映東京作品に共通する。本作もまたその一編。男の盛りの、スタアの絶頂期の、田宮二郎の美質にのみ、奉仕する、大映東京その職人技。プログラム・ピクチャアの幸福なる一点豪華主義。その、一点二郎主義の魅力の面白さ。
 田宮二郎は大手衣料メーカーのサラリーマンだった。自分を退社に追い込み、その裏でのうのうと会社の金を横領して、愛人の角枝子に料亭の女将までやらせている、悪徳専務に復讐する。原作は梶山季之。
 トラブル・コンサルタントと称して、会社の内情を探らせ、新商品の商品名をいち早く商品登録したり、新工場予定地の一部を先に買い占めたり、つまりあとで高額に買い戻させるために。
 田宮の、そのいちいちの行動、物言いに、われわれ観客は喝采を送る。
 いっぽう、冷酷なる悪徳専務が、結局、おろおろ田宮の言いなりになる、その悪徳専務の専横ぶりが、これまた絶品の山茶花究。冷酷な悪党をやらせたら、山茶花の右に出るものもなし。このひとが、ヴォードビリアン出身というのだから、世の中はどこでどう間違えるか、わからないもので。
 何かで読んだのだが、山茶花は色紙に座右の銘を書くときは「非情」と書いたとか。いいなあ。
 専務の軽薄なる腰ぎんちゃくの文書課長に、早川雄三。これまた、どんぴしゃり。その他、高松英郎、見明凡太郎、伊藤光一、大山健二、中村隆などなどの、有名無名の大映東京専属脇役俳優たちが、要所要所をしめ、見事な大映東京プログラム・ピクチャアが構築されていく。
 お約束の流れ作業、いつものルーティン・ワークが、いつもながら、かくも魅力的な、一点二郎主義の映画を作っていく。素晴らしい。
●追記●億単位の宣伝費をかける新商品繊維ポリレン(今は、もう聞かれなくなった<夢の新繊維>ってやつで)の、商標登録が、発売5日前って。
 当時は、そんなにのんびりだったのか。だから、田宮二郎も先を越せたわけで。映画(または原作)の創作なのか。当時はそうだったのか。もちろん、今では、そんな商品発売するのか、おそらくしないだろうというのも含めて、ばんばん商標登録されている現状に。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2011-12-31 01:24 | 旧作外国映画感想文

本多猪四郎「モスラ」

 京橋にて。「映画女優 香川京子」特集。61年、東宝。
 村山英治「日本の美術工芸 その手わざと美」が短編ゆえの、同時上映。ついで見だが、てっきり再見だと思っていたら、初見だった。いつもと逆パターン。たぶんリメイクのほうの印象ゆえだろう。
 特技監督は、もちろん円谷英二。
 原作(未読)は、中村真一郎・福永武彦・堀田善衛の、純文トリオとは、ちと、大げさな。
 謎の孤島を探検、<珍獣>捕獲、見世物興行、見せ場の高層建築との「からみ」(エンパイア・ステートビルが東京タワーに)など、あからさまに、メリアン・C・クーパー他「キングコング」(1933)の、パクリやないかい。
 「キングコング」の、<醜い野獣>の、美女への執着という<変態性(欲)>暗喩が、<双子の小美人>に変奏される。手のひらサイズの小美人というのが、何がしかの変態性を垣間見せる。
 アメリカお得意の大きいモノ志向から、日本の縮み志向への変奏という、わかり易さ?
 もちろん、キングコングの手の中のフェイ・レイが、そのイメージの原点だろう。
 まあ、ザ・ピーナッツが、美人、というのは、多少無理があるのだが(笑)、ちっちゃくて、ふるふるおびえていて、しかもうりふたつ双子というのが、小美人それらしさ?を偽装する。あえていえば、ジョン・ウォーターズ清潔?版の、フリークス性を感じますな。
 「モスラ」の「モスラ」たるゆえんは、いささか不細工な毛虫のお化けにあるのではなく、ふるふるふるえている、双子の小美人のヴァルネラビリティ(被攻撃誘発性、思い切り平たく言えば、いじめられっ子体質か)、愛らしく、可愛らしく、しかし、ふるふる震えている、妖精のような、小動物のような。
 ただ、ただ、モスラが、助けに来てくれるのを、確信を持って、まっている。
 男性性のキングコングから、女性性のモスラ/小美人へ。

 と、ここまで書いて、かなり有名な映画の感想を書くのに、怪獣映画にはあまり詳しくないぼくは、ひょっとして、怪獣マニアから見たら、頓珍漢な感想を書くのではないかと危惧して(笑)、「モスラ 感想」で検索(笑)。
 そうすると、リメイクや、のちのシリーズもの(の感想)ばかりがヒットして、なかなかオリジナル(の感想)にたどり着けない。オリジナルを大切にしない国だからなあ、と、ぶつぶついいつつ、ふと、ヘンなサイトを発見。
 なにがヘンかというと、映画のブログではなくて、セクシャリティに関するブログの掲示板らしい。どうやら、30代のヴァージンがどうたら、という、男性におくてな女性のブログの掲示板らしいモノに、ヒットしたようだ。
 で、男におくてで、かつ耳年増の女性が、男性の性的突起物を、初めて、実際に、目にした瞬間に、感じるのは、「意外と可愛い」(笑)というもので、どうやら耳年増な女性は、男のそれを、かなりグロテスクな外観のものと、妄想しているのが、いざ実物を見たら、「意外と可愛い」というような?ページらしい(たぶん、この掲示板の方が見たら、きわめて不適切な説明)。
 で、掲示板のある発言者が、男性の性的突起物を、「モスラ」と愛称にしたことから、ぼくの「モスラ 感想」検索にヒットしたようなのだ。男性のおちんちんの呼び方を、モスラにたとえ、意外にその掲示板で受けて、みんなが、「男のアレ」を「モスラ」と、呼び合うようになった、と。
 モスラの姿には、二種類ある。幼虫時代の芋虫状態と、成虫後の、羽ばさばさの巨大蛾。
 男性器の愛称となったのは、もちろん幼虫期の芋虫状態のほうで、成虫後は、わりと女性的な蛾の姿になる。
 ・…おお、そうか。「モスラ」という怪獣は、前期男性性、後期女性性の生きものだったのだ。つまり、この映画は、MTF怪獣モスラを主役とした、トランスセクシャル怪獣映画なのではないか(笑)。
 特に、のちのカラー・リメイク版では、成虫後モスラは、まるで、ドラァグ・クイーンのように、デヴァインのように、マツコ・デラックスのように、毒々しいまでのカラー怪獣に変貌するわけだ。
 ロリシカ国に属する孤島インファント(乳幼児の意味)島から、島の守り神である妖精姉妹ザ・ピーナッツが、日本に拉致された。もっとも、拉致したのは日本人ではなくて、ロリシカ人の悪漢・ジェリー伊藤である。
 インファント島の原住民の、妖精姉妹を助けてほしいという要請ダンスを受けて(原住民ダンス担当は日劇ダンシング・チーム)、巨大の殻を破って、巨大芋虫誕生。
 <母なる海>を、さながら男性器のように、ずんずん突き進んで日本へ。
 日本へ到達するも、東京タワー(これまた男性器を思わせる突起物)のところで、この東京タワーを中折れして、ここに繭を作る。東京タワーを半分に折る行為は、男性性の否定であり、繭化は、女性化の証であろう。
 と、頭の悪い(笑)通俗心理学モロダシの流れ。
 男性器そのものの似姿である幼虫モスラは、妖精姉妹の小美人に到達しようと志向して、湿潤な<母なる海>にひたりつつ、男性性を否定して、女性化していく。
 そして、日本では、巨大ダムの水中から出現することに、注目したい(笑)。 巨大ダムというのは、人工的に作られた、人工湖。男性が、人工的な<加工>ののちに、オネエになることの、暗喩なのではないか(バカ)。このダムのシーンでは、フランキー堺が、赤ん坊を危機から救う。
 人工湖のダムでの、新しい生命の蘇生こそが、女性化した新しい生命の暗喩でなくて、なんだろう(バカ)。
 通常の怪獣映画における怪獣とは、破壊神であり、男性性の象徴であるわけだろうが、本作は、珍しい、トランス・セクシャルな怪獣映画であるわけだ。

 コロムビア映画との日米合作であったようで、東宝怪獣モノとしては珍しく、クライマックスは、非日本。白人国ロリシカ国の首都ニューカーク市が舞台。白人国では、大八車で逃げ惑う庶民の姿も撮れず、本多猪四郎としても、切歯扼腕か(笑)。円谷采配の、西洋風の景観ミニチュアも、やっつけ仕事、手抜きが感じられた(ネットで調べたら、急きょ短期間で撮り直しした結果らしい。やはり)。
 と、アメリカを模したニューカーク市が舞台(日本部分でも、横田基地が出てくる)なので、ふと気付いたが、東宝怪獣映画では、なぜ、怪獣に、自衛隊とか、海上保安庁しか、対応しないのだろう。<圧倒的な日本の危機>に、なぜ在日米軍も、出てこないのか。本作なら、特にロリシカ人の悪漢も絡んで、モスラの破壊が進んでいく。ここは、当然、在日ロリシカ軍も、出張って当然の状況ではないか。
 というのも、ロリシカ人悪漢追跡には、日本の警官にMPが帯同している(あるいは、MPに日本の制服警官が帯同、か)。
 モスラが横田基地(周辺か)通過なら、当然在日ロリシカ軍は応戦すべきだろう。在日米軍がいるのは、まことに不都合な状況(自国防衛が自前では出来ないという不幸)だが、その現実を無視して、自衛隊しか、出さない東宝映画も、また、不都合だろう。
 ところで、これを見たのは、香川京子特集。最後にふれるが(笑)、人間側主演が、新聞記者・フランキー堺。その同僚カメラ記者が香川。
 美人女優なら誰でもいい、という扱いだが、香川の怪獣映画への出演は珍しく、海外での展開を考えて、黒沢・溝口など巨匠たち(国際映画祭の花形たち)に、出演した女優というプレミアム感ゆえの出演か。
 見せ場的には平凡で、特にどうこうする演技でもない。
 むしろ、生フィギュア感濃厚な小美人ザ・ピーナッツの、おたく趣味の始祖みたいな、<異様感>が、際立つようなのは、後出しじゃんけんか。
●追記●ネット検索によれば、原作のロシリカ国表記が映画版ではロリシカ国に変更されたという。
 ロシリカは、ロシア+アメリカの合成語。日米合作のアメリカ側としては、ロシアと一緒にするない、という不快感があってのことと推測するが、であるならば、後出しじゃんけん的に言えば、ロリシカは、ロリータ+ナウシカか。ナウシカの巨大芋虫?オウムは、モスラ芋虫が、発想の原点か、ともネットにかかれている。ロリータ+ナウシカ。うーん、なんとなく「モスラ」に似つかわしいネーミングで(笑)。

★新・今、そこにある映画★あらたに開設しました。
★映画流れ者★当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ

# by mukashinoeiga | 2011-12-28 05:09 | 旧作日本映画感想文

川崎徹広「豚と金魚」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。62年、東宝。
 傑作というわけではないが、見ていて、とても楽しい、明るくて、ほのぼのとする映画。年末年始にこんな映画を見られることの幸福。1月3日まで、上映中。絶対の映画ではないが、ぼく的には、絶対のオススメ(笑)。

 お楽しみその1。ヒロイン・若林映子が、大半のシーンで、バスト上部を露出している(笑)。明るく健康的なお色気の楽しさ(笑)。いや、これ、バカにしちゃ、いけませんぞ(笑)。
 この当時の、1960年代初期の、東宝メジャー映画で、当時の日本(および世界でも)の一般映画で、東宝専属女優が、こんなに胸チラを、しかも、1シーンのみならず、かなりエンエンと胸の谷間を見せるのは、異例中の異例なんだから。明らかに、女優本人、および監督が意図的に<共犯>しなければ、ありえべからざる事態なのだ(笑)。
 若林映子自体が、もともと、はつらつとした、あっけらかんな、健康なお色気が自然とにじみ出る天然キャラ、本作でもはじけまくっていて、すばらしい。それに加えて、この胸チラ大盤振る舞い(笑)。
 ありがたや、ありがたや(笑)。うつくしいカラー・ニュープリントで、これを拝める。眼福。

 お楽しみその2。脚本が松木ひろし。松木ひろしといえば、のちの「おひかえあそばせ」「雑居時代」「気になる嫁さん」「水もれ甲介」など、日本テレビでの<石立鉄男コメディ・シリーズ>で、絶対のコメディドラマを主導したシナリオ・ライター。本作でも、のちのクドカン、三谷幸喜など及びもつかぬ、コメディ・センスを披露。いや、監督の演出がナニなので、若干損しているが、細かいギャグの台詞とか、トニー谷のラーメン屋で、いつもはラーメン50円なのに、意地を張って150円のスペシャル・ラーメンを注文する飯田蝶子、その<150円のスペシャル・ラーメン>にも、大爆笑。これが、スペシャルって(笑)。

 お楽しみその3。原作が梅崎春生。梅崎春生といえば、大快作「つむじ風」を、昔は何度も何度も読みました。その映画化で、風来坊の主人公を、渥美清とは、これまた、ベスト。楽しい楽しいコメディ。本作も、だから、ニコニコものの、映画に、なりました。

 お楽しみその4。その梅崎春生自身が、モデルだろう、三流小説家に、上原謙。実は、本作は、この当時としては、珍しい、実質・上原謙の主演作。この上原の、コミカル演技が、またまた、いいんだよね。最近は、なぜか「アツカマ氏とオヤカマ氏」など、上原のコメディ演技に当たることが多いが、本作も、なかなか。上原謙を、大根といったヤツは、誰だ。戦前二枚目もいいが、戦後の三枚目、ないし二枚目半も、素晴らしい。

 お楽しみその5。上原謙の隣家・飯田蝶子おばあちゃんの家に下宿する、画家のにして、歌も歌うノーテンキなんでも屋に、好青年・藤木孝。もちろん、当時の人気歌手なのだが、そのC調青年ぶりが、ああ、いいなあ。明るい、軽い、いい加減、楽しい。これ、偶然にも、<真のお正月映画>なのではないか(笑)。

 お楽しみその6。ひっじょーに、味わい深い、悪役に、ニヒルでコミカルな、絶品気持ち悪さの、絶品おかしい、トニー谷。全盛期より素晴らしい、楽しい<やなヤツ>。ああ、素晴らしい。
 元祖・高田純次とも言うべき、渡辺篤の、養豚場主人、元祖あつかましおばさんの、若水ヤエ子。定番ながら、いいなあ。

なお、多摩川ベリでのオールロケ。その、いまでは失われた風景の数々を、ていねいにロケ。好ましい。
 そして、川べりで、自転車の若林映子、ふいの大風に、スカートまるめくり、白いパンツ丸見え、このアクシデントの素晴らしさ(笑)。奇跡のワンショット(笑)。
●追記●いや、アクシデントと書いたが、あまりに若林映子の堂々ぶり。これは、意図的な、パンチラか。いや、パンチラというのは無理なほどの、パンモロなのは、これは、マリリン・モンローへのオマージュか。ちなみに、本作公開半年後に、マリリンは、亡くなっている。
くしき因縁か。


★新・今、そこにある映画★

あらたに開設しました。
★映画流れ者★
当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ


人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2011-12-26 23:41 | 傑作・快作の森

せんぼんよしこ「赤い鯨と白い蛇」

 京橋にて。「映画女優 香川京子」特集。06年、クリーク・アンド・リバー社=東北新社。
 作られた時代が時代だから、あんまり期待しないで見たら、なかなか面白かった。
 いままで、OLD映画ファンとして、香川京子を、ずうっと、後追いして、見てきた(いや、彼女だけを、というのでは、もちろん、ないのですが>笑)。それでも、今回の特集ではじめて見た、初期の超絶美少女ぶりは、オドロキだった。こんなに初々しい香川京子の美しさは、見たことがなかったのだ。
 そして、本作は、「おばあちゃん」と呼ばれる香川京子。ぷっくらとした、ほほはこけ、目は落ち窪み、生来の鼻の大きさが目立ち、昔日の面影は、微妙。しかも、いかにもマジメそうなキャラは変わらず、ぶっ飛びキャラ・樹木希林の、無手勝流に比べると、印象は薄い。
 いやあ鈴木清順「ツィゴイネルワイゼン」の頃は(それ以前も)ほかの出演者に比べて、あまりの演技の下手さに辟易したものだが、そういやぁ、盟友とも言うべきなのか、吉永小百合の映画に助演したときも、どうなのよ、という生煮えな演技。
 悠木千帆/樹木希林は、香川京子と逆に、年取ってからは、うまくなったなあ。開ききったというか、開き直りきったというか。
 千葉県館山オールロケ。ヴィデオ撮りの白っ茶けた画面ながら、映像の密度は濃い。
 浅田美代子、宮地真緒、坂野真理(浅田の小学生の子供役か)、主要キャラ5人の女性ばかりの配役だが、みな、なかなか、柄に合っている好演。
 戦時中から戦後にかけて少女・香川が、そのあとのあとくらいに樹木が、そのあとに現在、浅田・坂野親子が、同じひとつの木造家屋に暮らした。三代にわたって、同じ家に暮らした女性たちが、その家の立て壊しを前にして、その家に集う。
 香川も、孫娘・宮地も、樹木も、浅田も、みな、それぞれの悩みを抱えつつ、というのは、定番だが、一種の、ミニ・グランドホテル形式。ミニでグランドというのが、いかにも、つつましやかな映画にふさわしいのだが。
 しかし、香川京子、卑怯なまでにあざとうまい絶品・樹木希林で損をしているが、それを差し引いても、おばあちゃんになっても、生硬な優等生イメージで、凝り固まり、味がない。若いときの、優等生は優等生でも、時にいろいろ暴発していたおもかげもなく、さびしい。
 なお、制作トップに、昔なつかし、奥山和由の名が。チームオクヤマとして、再起を図っていた時期の作か。彼にしては地味な映画で。こんな地味な映画で、再起は、難しかったろう。

★新・今、そこにある映画★
あらたに開設しました。
★映画流れ者★
当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ


人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2011-12-22 03:01 | 旧作日本映画感想文

村山英治「日本の美術工芸 その手わざと美」

 京橋にて。「映画女優 香川京子」特集。63年、桜映画社。
 フィルムセンターのスケジュール表にいわく、<『天国と地獄』公開の同年に、日本の美術工芸を海外に紹介する目的で作られた外務省企画の文化映画。浜田庄司(陶器)、富本憲吉(磁器)、森口華弘(友禅)、松田権六(蒔絵)、田辺竹雲斎(竹工芸)、棟方志功(版画)、前田青邨(日本画)の手わざを記録。>。
 それぞれの名人の創作風景、インタヴューのさわりを並べ立てた、28分の、ありきたりな、凡庸な、おざなりな、文化(紹介)映画。

 疑問その1。冒頭に字幕で、本作がさまざまの賞を受賞しているというクレジット。二行目以下は、目で終えなかったが、一行めの、
<日本海外紹介映画コンクール金賞受賞>には、衝撃。
 こんな、凡庸な映画が、コンクールで金賞って。しかも、日本紹介映画コンクールって。そういうコンクールがあったのか。しかも本作は、<外務省企画>、つまり、税金で作られた映画か。おそらく、外務省が企画して、外務省の外郭団体(当然天下りもありか)が主催しただろうコンクールで、受賞。典型的税金無駄遣いのマッチポンプやないか、と、推測するが。 
 しかも、ドキュメンタリー部分ではなく、イメージ・シーン用に、香川京子、三宅邦子を投入。お茶のシーンなどで、愛想を振りまく、のだが、正確な所作を意識しすぎて、香川京子は、なんとなく、ぎこちない(笑)。三宅邦子は、この種のロボット的所作?は、正確なので安定して、見ていられる。
 こんな、見ていて、興奮を誘わないような映画は、単なる税金の無駄遣いだろう。官と民のコラボの、ほとんどゆいいつの成功例である市川崑「東京オリンピック」の、唯一無二性が、光り輝く所以で。

 疑問その2。ナレーションにいわく、「日本も戦後十年たってようやく伝統文化に、再び目を向けるようになった」、って、発想が(当時としても)10年遅れていないか。よく、わからん。
 香川京子、三宅邦子を贅沢に使って、しかし、映画は、ちっとも、贅沢ではない。
 税金の無駄遣いというだけの、映画か。

★新・今、そこにある映画★
あらたに開設しました。
★映画流れ者★
当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ


人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2011-12-21 00:13 | 旧作日本映画感想文

石井輝男「霧と影」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。61年、ニュー東映東京。
 面白い。石井輝男は、初期から、すばらしい映画センスでかっ飛ばす。
明日12/20まで上映中。おすすめの軽快作。
 新聞記者・丹波哲郎。旧友の学校教師が謎の死を遂げたことから、北陸・金沢の地に、やってくる。実は旧友だけのことではなく、その旧友に、妻として取られちゃった、かつて片思いのひと・鳳八千代が、不幸になる事態に、胸を痛める。
 過失の事故と片付けられた旧友の死、その真相を探る。協力するのは、地元通信員の青年・梅宮辰夫だ。精悍な若手・丹波、まだまださわやか青年の梅宮、ともに好感度は高い。
 崖から海に落ちて、死体となる。その後TV2時間ドラマにまで、引き継がれる、日本型ミステリ・ドラマの王道。
 山間の僻地に残る、本家と分家の「北陸」の旧家。土蔵に精神病の息子が閉じ込められる。息子の嫁と睦み会う義父。横溝的因習旧家ドラマと、のちの石井輝男「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」をも、思わせるイメージの乱舞にニヤリ。証拠のひとつに、線香花火の小箱があるなど、思わずニヤリ。
 ちなみに、この北陸の因習を描く映画の原作は、もちろん水上勉だ。
 しかし、東京で売られた花火小箱が、メーカー、販売店を経て、<たった一人の購買者>が、突き止められるとは、当時であっても、無理ではないか(笑)。
 小味なモダン・ジャズの、繊細な挿入(何でも屋の木下忠司)も、好ましい。
 ときおりの静謐な描写に、清水宏、成瀬巳喜男の助監督だった石井らしさ、というのはほめすぎか。
 坂と路地の隘路での、追っかけ追跡。現実の路地を、カスバの迷路に見立てた、ロケーションの追跡行に、石井のカスバ志向が伺える。追っかけの攻守の、巧手の興趣、わくわくするよね。
 石井輝男、ヘンタイ外道な映画だけでなく、こんな小味なサスペンスも、素晴らしい。

★新・今、そこにある映画★
あらたに開設しました。
★映画流れ者★
当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ


人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2011-12-20 00:44 | 旧作日本映画感想文

弓削太郎「男の銘柄」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。61年、大映東京。
 <日活の肉体派女優筑波久子の大映移籍第一回作品>とのこと。12/24(土)まで、上映中。おすすめ。
 いやあ、筑波久子、絶対の魅力! 浮気する人妻を、さわやか(笑)かつキュートに演じる。
 夫・大瀬康一は教師。元教え子の渋沢詩子と、週末浮気旅行。妻・筑波久子も、これに対抗して、若い男、ヘンタイ中年男・根上淳、根上が雇ったチンピラと、次々、浮気。夫の相手は一人なのに、妻は、次々エスカレート。
 こんな若妻を、さわやかに、キュートに、汚れなく、演じるのだから、たいしたもの。、筑波久子の、絶対的な魅力。素晴らしい。
 筑波久子といえば、鈴木清順の超珍作「らぶれたあ」はじめ、日活映画に多数出演、ぼくも何本か見ているが、これが、ちっとも、印象に残らない凡演。何の魅力も感じられず。その後の、東宝、東映の助演でも、印象に残らず。
 「ヘイ・ベイビー THE SEX LIFE」(1971年、筑波コーポレーション、監督・ナレーション・主演、激しく、見てみたい) をへて、渡米して、かのB級珍作ジョー・ダンテ「ピラニア」のプロデューサーに(最近、3Dとしてリメイク、これにも、プロデューサーとして名を連ねる。3Dは未見)。
 ということしか知らなかった。それが、筑波久子、この魅力。これをすばらしいといわずして、ナニをすばらしいというのか。
 もちろん、50年前のメジャー・スタジオ映画だから、女優もほとんど、肌は、見せない。その上で、エロティック・コメディーを展開する無理は承知しつつ、それでも、このスマートなセクシーさ&ピュアさ。
 映画も、その魅力を余すことなく伝え、快作の部類に。
 なお、夫役の大瀬康一、数年後に「隠密剣士」(ほぼ未見)でTVヒーロー としてブレイク。その数年前に、このしょぼい役か。さらに、筑波久子に男を世話する、証券会社社員に左幸子。日活時代は、筑波など歯牙にもかけないヒロイン女優だったのに、この役割逆転は、結構衝撃。

★新・今、そこにある映画★
あらたに開設しました。
★映画流れ者★
当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ


人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2011-12-19 00:55 | 旧作日本映画感想文

大曽根辰保「獄門帳」

 京橋にて。「映画女優 香川京子」特集。55年、松竹京都。
 この、同じ特集で見た大曽根辰保「流轉(るてん)」の感想駄文で、大曽根を凡匠扱いしたばかりだが、なんと本作は、オドロキの大快作。
 ぼくも、本と映画のミステリが好きで、かなり読んでいるし、見ているほうだと思うが、映画のミステリで、あっとオドロキ、快哉を叫んだミステリは、数少ない。たいてい、なにかの変奏だったり、パクリだったり、うやむやに映像テクでごまかす体のミステリが、映画では大半だったりする(その事情は、英米ミステリ映画でも、あまり、変わらない)。
 それが本作では、オリジナリティーあふれる、オドロキの展開。いや、ぼくが中途半端なミステリ好きで、実は、ぼくの知らない前例があったりするかもしれないが。 
 原作・沙羅双樹。知らねーな。脚本は井手雅人。沙羅双樹というへんちくりんなネーミングからすると、戦後無数にあったカストリ雑誌か、探偵小説専門誌に、数作発表したマイナー作家か。
 本作、鶴田浩二・香川京子の主演クレジットだが、実質は笠智衆の主演作。笠の時代劇は珍しいが、その台詞回しは、ほとんど普段の現代劇と変わらない(笑)。耳に快い台詞回しの快。小津映画に勝るとも劣らない(笑)笠智衆の代表作や。

 笠は、小伝馬町牢屋敷の牢奉行。重い風邪で、久しぶりに出勤すれば、その間に入った新入り死刑囚(当時のことだから、市中引き回しの上、打ち首獄門、というヤツだ)鶴田浩二が、目に留まる。
 ここで、何千人も罪人を見てきた、牢奉行・笠は、「こいつは無実だ」と、直感する。そして、牢奉行(つまり、刑務所の管理官だから、再捜査なんて権限外)ながら、再捜査。ストーカーのように、ツルコウに、付きまとい、真実を話せ、と迫りまくる。この笠の快感演技が、ミステリ好きとしては、楽しい。
 ツルコウは、仕える主の旗本・岡田英次に、奥方・香川京子の間男と疑われ、激昂した岡田に斬りつけられ、逆にこれを殺すシチュエーションになり、そののち奥方・香川と心中した(ツルコウは生き残り、香川は死ぬ展開に)、当時は心中(相対死に)は、重罪であった。あるじ殺し、あるじの妻女との心中、ダブルの重罪で死刑に。

 笠智衆が、名探偵役という、予想外の快。まことに、さまになっておる。口調は、現代ものと変わりないけど(笑)。
 ツルコウは、これが迷惑。「誰か」をかばって、自分が「犯人」なんだから、早く死刑にせいと、けしかける。ま、「誰」をかばっているのかは、この際、丸わかりなのだけれど。鶴田浩二の、そのピュアさが、美しい。
 笠は、自分の直感(こいつは無罪だ)を、信じて、権限外の再捜査に夢中。部下も南町奉行・近衛十四郎も、老副官・香川良介(例によって抜群の安定感)も、そして、当の死刑囚ツルコウも、いささか困惑するほど。

 そして、夜を徹しての笠の再捜査、刻々迫る翌早朝開始のシチュー掻き回し、もとい、市中引き回しの時間、そして、ここで、あっと驚く新展開。
 猫。
 いるはずのないところに猫がいる。
 ここで笠は自分の推理に確信を持つ。猫だけが知っている(笑)。あっと驚く展開確信のきっかけが、猫一匹。おしゃれにして、ナイス。
 でも、まあ、監督が大曽根辰保じゃない、もっとセンスのある人だったら、もっと、面白く、傑作になっていたろう。それが、快作どまりなのは、大曽根辰保が凡匠の凡匠たるゆえんか。

 岡田英次とツルコウの木刀対決。すばらしい。
 ツルコウの市中引き回しと、江戸大火事が重なるスペクタクルな展開。この大火事を、迫力ある映像にまとめた、松竹京都のスタッフワーク。素晴らしい。
 小伝馬町牢屋敷に迫る大火。「俺たちを焼き殺す気か」とパニくる囚人たち。
 当時のシステムなのか、この映画のフィクションなのか、牢のカギは南町奉行所にあり、小伝馬町牢屋敷にはない。「焼き殺す気か」VS「カギはない/罪人たちを解き放す権限はない」の板ばさみに悩みつつ、笠智衆牢奉行が下した決断は、「牢を大ヅチで打ち破れ、責任はわしが持つ」の、牢奉行自らの「牢破り」(笑)。すばらしい。
 解き放たれた、ツルコウが、突き止めた真相。そう、「罪をかぶった」はずのツルコウも知らなかった真実があるのだ。ここら辺の二段構え三段構えのミステリ仕立てが、素晴らしい。
 そして、香川京子の、とんでも勘違い。場内爆笑の珍展開さえ、素晴らしいミステリで。
 最後の、笠の粋な計らいも含めて、素晴らしい。
 まあ、監督が、大曽根辰保じゃない、もっとセンスのある人だったら、もっと、面白く、傑作になっていたろう。二度くり返しましたが、そうであっても、面白い。
 香川京子も、美しい。しかし、くり返すが、監督が、大曽根辰保じゃない、もっとセンスのある人だったら、もっと、異常なまでに、かわいく、美しく、撮られていただろう。
 快作だが、快作「どまり」な欠点も。
 しかし、ミステリ展開は、実に、オリジナル。脚本は、そのうまいトリッキーさを、必ずしも、うまく取り入れてはいないけど。
 つまり、あまりに、贅沢な素材過ぎて、下ごしらえが、料理人の腕が、味付けが、問われてしまうわけだ。こういうのを、贅沢な悩みというのか。違うか。

★新・今、そこにある映画★
あらたに開設しました。
★映画流れ者★
当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ


人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2011-12-17 01:59 | 傑作・快作の森

内川清一郎「女侠一代」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。58年、松竹京都。
 初見作なのに、既視感ありあり。原作・火野葦平の映画では、おなじみのキャラ・女親分の島村ギンを、清川虹子が主演する。快作。面白い。
 清川の主演作は清水宏「母情」(50年、新東宝)と、本作しか、見たことがない。
 どちらも面白いのは、たぶん、コミカル専門の脇役女優を「あえて」主演にすること自体が、すでに、映画会社・映画監督にとって冒険だからだろう。清川虹子主演では、おそらくヒットしまい、しないだろうけど、作ろうという。ハイリスク・ロウリターン。それを保証するため、ワン・シークエンスのみ出演の山田五十鈴、近衛十四郎、サガミチ、助演の三国連太郎、モリシゲ。さらに、美術などのスタッフ・ワークも、力強い、素晴らしさ。
 明治半ば、九州小倉で、鉄道建設が進む。しかし、それまで川舟で石炭を運んでいた船頭連中が黙っていない。鉄道が出来たら死活問題だ。かくして、<川筋のもの>たちの、鉄道建設妨害。
 これを、女だてらに、男以上の豪快さで納めたのが、島村ギン。清川虹子ベスト・パフォーマンス。清川の<完全に尻にしかれた亭主>に、これ以上ないだろう、田中春夫、ああ、最強や。尻に敷かれ、妻・清川を思い、そして、まったく省みられない(笑)。
 清川虹子は、三国連太郎を見ては、「(いい男やなあ)あんた年いくつ?」「二十四や」、森美樹を見ては、「(いい男やなあ)あんた年いくつ?」「二十六や」、女のロリコンか。
 ついには<糟糠の夫>田中春夫を捨てて、森美樹の元へ。ガハハ系豪快女親分が、実は、ずうっーと、強い男に、ぐいぐい引っ張ってほしかった、だって女の子なんだもん、と、衝撃のどんでん返し告白。しかも、その<あたしを引っ張ってってくれる強い男>が、ふたりとも、男感ギトギトの年下イケメン男。なに、この、どんでん返し。哀れというもおろかな、田中春夫。

 島村ギンは、火野葦平「花と龍」サーガではおなじみの、北九州・小倉一円を差配する、女親分。
 舛田利雄「花と竜」(1962日活)、マキノ雅弘「日本侠客伝 花と龍」 (1969東映)で高橋とよが二度演じ、山下耕作「日本侠客伝 昇り龍 」(1970東映) で荒木道子が演じ、加藤泰「花と龍 青雲編・愛憎編・怒涛編」(1973松竹)では任田順好が演じた。
 それぞれ主人公・玉井金五郎(愛称がタマキン(笑)、火野の父親がモデル、ちなみにその妻は玉井マン)を、石原裕次郎、高倉健(東映で二度)、渡哲也 が演じ、そのタマキン・マンの夫婦にからむ(という言い方もナニですが)豪快な女親分だった。
 現在、暴対法などで、社会的に締め付けられている暴力団も、明治の時代、ある時期においては、<庶民の味方>でも、あった、という側面が、あったのだ。

 goo映画で調べた限りは、清川が、本作のほかに島村ギンを演じたようすはない、ようだ。不思議であり、残念。ぴったりのキャスティングなのに。ただ、舞台では、清川、島村ギンをたびたび演じ、当たり役だったようで。
 なおgoo映画によれば、島村ギンを表彰する福岡県知事役は火野葦平とのこと。オドロキだ。知らずに見ていました。
 もっともgoo映画には、千石規子、北上弥太朗、須賀不二男、渡辺文雄、戸上城太郎、藤間紫も出演しているとのことだが、ぼくには記憶になし。それとも、ぼくの顔面認知力が低いのか?(笑)
●追記● 須賀不二男、渡辺文雄については、Heroさんの指摘で、鮮やかに(笑)思い出しました。須賀不二男は、ちいさな組のオヤブン、コレラでやられた田中春夫・清川の組を、助ける。渡辺文雄は、清川虹子が、熱血のあまり、投獄された際、隣の獄で、清川をサポートした好漢革命家。なお、渡辺文雄も、若いのに、おでぶちゃん、イケメンでないので、清川虹子、萌えず(笑)。

 なお、さらにしつこく。本作で三国連太郎が助演した、九州一の大親分・吉田磯吉も、火野葦平サーガでは、おなじみ。
 マキノ雅弘「玄海遊侠伝 破れかぶれ」(1970大映)で勝新太郎が主演したほか、前記「花と竜」で芦田伸介、「日本侠客伝 花と龍」で若山富三郎、「日本侠客伝 昇り龍 」で片岡千恵蔵、がそれぞれ助演した。
 以上の、火野葦平原作の小倉炭鉱サーガ、その映画化作品は、みな、それぞれ、面白い。鉄板の娯楽映画。

★新・今、そこにある映画★
あらたに開設しました。
★映画流れ者★
当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ


人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2011-12-16 02:05 | 旧作日本映画感想文

久松静児「神坂四郎の犯罪」

 阿佐ヶ谷にて。「現代文学栄華館-昭和の流行作家たち」特集。56年、日活。
 かなり知名度が高い、つまり<名作と誉れが高い>映画なので、昔から、見たいと思っていたものの一つ。
 雑誌編集長の森繁久弥が、会社の金200万円の横領と、文学少女・左幸子への「心中」偽装殺人の罪で、起訴される。ほとんどのシーンが裁判劇となる、日本映画では、珍しい構成。各証人の証言にあわせて、回想シーンが、それぞれ挿入される。
 事務員・高田敏江、雑誌社顧問の評論家・滝沢修、妻・アラタマ、などが証人に立つが、みな、勝手に自分に有利な証言をする。左幸子は死んでいるので、残された日記が朗読される。
 果たして、モリシゲは、本当に横領犯人で、愛人を心中に見せかけて、殺したのだろうか。それとも、モリシゲが主張するように、雑誌社社長・清水将夫や、顧問・滝沢修の謀略によるものか。
 この当時の日本映画には珍しい、裁判劇。たぶんに、このジャンルお得意のアメリカ映画に影響されたものか(原作・石川達三)。
 しかし、この裁判劇、かなり、甘甘。法と論理と証拠に基き展開するはずの裁判劇が、情念と、くだぐだあいまいな私怨のやり取りに終始し、論理も法理もまったくなし。当時の名作○○選では必ず登場する本作だが、どこがいいんだか、優れているんだか、まったくわからない。凡作が、ある種の<当時の状況>により、<問題作>にフレーム・アップされる典型のひとつかと。
 本作のモリシゲの演技が評価されている。しかし、白か黒か、あいまいな二重性を演じ切れてはいない。モリシゲは、いつも<奥がない><下心丸わかり>のナイス・キャラを演じるには長けているのだが、<悪人か、冤罪なのか>あいまいな、二重性のキャラを、まったく演じられない。<思わずにじみ出るスケベ心>を、演じて絶品なのに、スケベなのか、スケベでないのか、人によって評価が、違う、なるキャラを演じうる演技力ではないのは、明白なのに。
 しかも、モリシゲが「社長に、はめられた」と証言するたびに、傍聴席の社長は、あきらかにたじろぐ。清水将夫、そんなに、たびたび、たじろいでいたら、自分がモリシゲをはめたこと、丸わかりだろ。都合が悪くなると、よよよ、と泣き崩れる後輩女優・高田敏江を見習えよ(笑)。まあ、清水将夫に<繊細な演技設計>を求めるほうが無理なんだけども。
 そういう意味では、やはりモリシゲに暴露される滝沢修は、清水将夫どうよう、たじろぐのだが、まだ滝沢のほうが、暴露されてうろたえているのか、思いもよらぬ誹謗におろおろしているのか、まだ、判別しがたい演技で、さすが、清水将夫より、演技に一日の長がある(笑)。
 当時の日本映画としては珍しい裁判劇だが、展開がずさんすぎる。残念。
 そして、こんな映画を<問題作>、モリシゲの演技をほめるのは、明らかに<時代的過失>。モリシゲ演技の美質は、こんなところにはない。

 なお、蛇足だが、本作上映の後半に、たびたび、音声が途切れる。ついには、かなり長時間の音声なし(映像はふつうに流れる)。とうとう上映中断、スタッフが「16ミリ映写機の故障です。このまま音声不完全な映写を続けますが、途中退場でも、最後まで見られても、招待券、または返金対応する」とアナウンス。ぼくを含めた大部分の客は最後まで見て、終了後、招待券を受け取る。途中退場は数名。
 再開後、意外と、持ちこたえる音声。でも、裁判劇で、台詞が聞こえないのは、論外で、かなりの台詞を聞き逃したことになる。
 映写機には、フィルムの映像面に当てて、映像をスクリーンに投影拡大する、光源ランプとは別に、サウンドトラックに光を当てて、光学録音を再生する、音声用ランプがあり、この音声用ランプが、電灯ランプ同様「いつかは切れる」わけで。完全に切れる前の、明滅状態による、音が出たり出なかったり状態、と思われる。しかし、経験上(ぼくは35ミリ映写機しか経験がないが)この光学音声再生用ランプが、切れるのは、珍しい。しょうがないといえば、しょうがないトラブル。ラピュタ阿佐ヶ谷の対応も、ほぼベストで。
 なお、故障したのは16ミリ映写機なので、このあとの35ミリ「新しい背広」「女侠一代」は支障なく上映されるようだが、16ミリ「一刀斎は背番号6」は上映中止。本作「神坂四郎の犯罪」「女侠一代」「一刀斎は背番号6」と、珍しくラピュタを固め見しようとしたのに、残念。

★新・今、そこにある映画★
あらたに開設しました。
★映画流れ者★
当ブログへの感想・質問・指導・いちゃ問はこちらへ


人気ブログランキング・日本映画
↑↓クリックしていただければ、ランクが上がります(笑)。
にほんブログ村 映画ブログ 名作・なつかし映画へ
にほんブログ村

# by mukashinoeiga | 2011-12-13 23:54 | 旧作日本映画感想文

< 前のページ 次のページ >